戦闘開始~母vs母~
「あんた、見たことない顔だね…。そんなお上品な奥様が私と戦うなんて…、早く死にたいのかい?」
嘲笑うようにして腕を組み上から見下ろす華那は続ける。
「あー、私、あんたみたいな女、一番嫌いなタイプだわ。綺麗ごとばっか並べそうな優等生?母親の鏡ですと言わんばかりのその表情…。目障りだね。吐き気がする。さっさと始末してやるよ。」
レティシアの目の前に立ちはだかる華那は、その美しく華奢で気品あふれる女性に、引け目と妬みを感じないわけがなかった。自分には全く持ち合わせていない要素。どれ1つとっても勝てるものがない。そんな華那の様子を見たレティシアは、
「あなたから放たれているオーラを見ても分かってはいたけれど、人を見た目だけで判断して、小馬鹿にした発言。人を貶めて自分を正当化する事しか出来ないなんて…本当に可哀相な人ね…。
いえ、違うわね…。一番可哀相なのは…、あなたの元に生まれてきた子供たちだわ。
何をするにも自分優先。自分以外はどうなっても構わない。子供が泣いていようが、お腹を空かせていようが関係ない。自分の欲を満たすことだけしか考えられない、自分がやっていることを虐待だと気づいていない浅はかな母親の元に生まれてきてしまって…。」
レティシアも負けてはいない。
その言葉を聞いた華那は、フンっと鼻で笑って、
「何を言ってるんだい。子供なんて親の言う事聞いてりゃ、それでいいんだよ。だって、この世に生み出してあげて、その上育ててやってるんだから…。
むしろ感謝してほしいくらいだね。私は母親としてちゃんと責任を果たしてきた。あんたたちは虐待といってるのは、れっきとした躾なんだよ。言ってもきかないなら、手だって上げるだろ?
私と同じように思って、子育てしてる母親なんて、この世の中にたくさんいるはずだわ。」そう言ってペッと唾を吐く。
「じゃあ、あなたは、あなたが子供たちにしてきた事全部、万人の前で、これが自分の子育てですって胸を張って言えるというの?世の中の母親の全員が全員、私の子育ては間違っていないなんてそう言える人はまず少ないと思うけど…。あなたとは根本的に違う…。
だってあなたは子供を愛していない…。
世の中のお母さんたちは、子供を愛しているからこそ悩み、苦しんでいる。
その子に合った子育てはどんなものか…。果たして自分の教えや導きが本当にその子にとって正解なのか…。日々模索しながら子育てしてるのよ。心折れそうなときももちろんある。思い悩んで涙する時だって…。
それでも日々頑張れるのは子供を愛しているから…。子供が自分にとってかけがえのない存在だからよ…。
でもあなたには愛が無い。そこに愛はないのよ。だから聞くに堪えないひどいことも平気でやってのける。愛があったらそんなことできるはずがないもの。あり得ないわ。
だからこの前の戦いの中で、自分が朔や閃?に対してしてきた虐待を全否定して、最後には謝ったのは、全部嘘だったって言う事を自ら白状したようなものね。」華那はレティシアの言葉を聞いて驚く。
「なんで閃の名前を知っている?」
急に額から汗が噴き出している華那にレティシアは追い打ちをかける。
「この前の戦いで、あなたがラーニーをそう呼んでいたじゃない?つまり、ラーニーはあなたの息子だってことでしょ?」
レティシアはここぞとばかりに投げかける。
「あなたは、閃と朔の母親。その2人が小さいころから虐待を行ってきた。2人ともに、あなたに対する憎悪が尋常ではないことから考えると…、あなたはどれだけ自らお腹を痛めて産んだ子供たちを痛めつけ、苦しめてきたの?
もし、ラーニーが破壊神になった要因が、あなたによる度重なる虐待なのだとしたら…、あなたの罪は大きすぎる…。
死んで償おうと思っても、それだけじゃ足りないほどの罪の重さだということを、あなたはその脳みそによく叩き込んでおいた方が良いわね。」
レティシアの表情が話していくにつれて、怒りで満ちていく。
一方の華那は「閃」の名前を聞いてから、様子がおかしい。「閃」の名前に異様に反応しているようにも見える。




