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お父さん!お母さん!~長い時を経て叶った親子の夢~

『これは、ティアナが一番望んでいるものだろうと君が作ったイメージだよね?


でも、これは君自身が望んだことかなと思うけど…、


私もまったく同じだ。


もし叶うのならこの幸せな3人でのありふれた日常を味わってみたかった…。』


ラルスの言葉に小さくうなずいたレティシアは、


『結局…、あなたの誤解を招くような事態を引き起こしたのは私だけれど…、全てのピースが少しずつずれていた事に気付きがらも、何も変えなかった自分が悔しいし…、正直命が果てた今も、悔やんでも悔やみきれないわ。


 結婚当初、あなたは私に愛情なんて微塵も持っていないんじゃないかと感じていた時に…、ちゃんとあなたに歩み寄って、それを伝えれば良かったのよね…。


私に対する思いを…。でも怖くてあの時はそれが聞けなかった…。


全て私のせいよ…。』


静かに話す。その妻の言葉に首を横に振りながらラルスは、


『いや違う君のせいじゃない。それは、私のセリフだ…。


女性と交際経験のない自分が、そういった経験が豊富そうな君と…どう接していいか分からなかったのだとしても…、それでも君に自分の不器用さも全部含めて君に伝えられていたら…。


今ごろこんな幸せな生活を送っていられたのかもしれないんだ…。


君の本心が分からないまま、自分のプライドばかりを気にして…、


それを聞く勇気を奮い立たせる意志を持とうとさえしなかった…、


私の落ち度が全ての原因だよ…。


君のせいじゃない…。』


そう悔しそうに話すラルスの心の中にも後悔しかない。


それを聞いたレティシアも首を横に振って、ラルスの手に自分の手をそっと置いて、愛する夫の目を潤んだ瞳で見つめる。


過去を振り返りながら2人がイメージを共有していると、目を閉じていたティアナの口元が上がっていることに気付く。


『ねえ、あなた…。今、口角が上がったわよね?』レティシアは目を輝かせながらラルスに問う。


ラルスも嬉しそうに、 


『ああ、間違いない。もう少しでティアナの生きる力を取り戻せるはずだ!2人でティアナを呼ぼう。』


そう言って2人で最愛の娘の名を呼び始める。


しばらく無我夢中で呼び続けていると、その2人の目の前でティアナが微笑みながら、小さいながらも声を出し始める。


『お父さん…、お母さん…?』


夫婦、目を合わせて喜ぶ。


『今、私たちのこと…呼んだわよね?私の勘違いではないわよね?』


レティシアは興奮しながらラルスに問う。ラルスも嬉しそうに、


『ああ。間違いない!もう少し呼んでみよう。』そして再び名前を呼ぶと、


それに反応したティアナがその目をゆっくりと開ける。


2人は喜びが言葉にならない。


『ティアナ!』


 興奮した両親の前で、ティアナは朦朧としているようで、目を開けても何も見えていないようだった。


その様子から、2人はティアナの両手をそれぞれが持って、声をかける。


「ティアナ。」


その言葉に呼応するようにティアナの視界は少しずつクリアになり、意識もはっきりし始めたのか、ティアナの顔に笑顔が戻る。


「これは夢?お父さんとお母さんの顔が見える。」


2人は再び顔を見合わせ、笑顔で喜びを分かち合う。


「これは夢じゃないわよ。本物のお父さんとお母さんよ、ティアナ。」


そう言ってティアナを抱きしめるレティシア。


母の胸に2000年以上の時を経て抱かれ、そして前を向けば父の姿が見える。そんな状況にティアナは涙が自然とあふれ出し、


「お父さん、お母さん!」そう言って大声で泣き始める。


その姿に感極まったラルスは、2人を大きく包み込むように抱きしめる。


現実では叶うことがあり得なかった奇跡の時間を今、3人は長い時を経て共有していた。


この時間が永遠に続けばいいと願いながら…。

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