家族として~味わう事の無かった家族の日常~
その問いにレティシアは、
「そう、そう(笑)
これはね…、ここに来る前に莉羽さんが、ここに来たら長身の細身の色男がいるだろうから、その人に使い方を聞いてって言われたのだけど…(笑)、
色男ってあなたの事ね。」くすっと笑うレティシアに、
「莉羽…、何を言ってるんだ(笑)。でも…、
男を見る目はあるんだな…。」と顎に手を当て少しドヤって言うと、
「莉羽が君にこれを渡したって事は…、きっと、この石が君に力を与えてくれるって事だろうな…。
おそらく、君が願えば、石がそのように導いてくれるはず、もし次にどうしていいか分からなくなったとしても、石が次の行動を導いてくれるだろう。だから君は感じたまま、思うがままに行動すればいい。
君の想いとこの石の力でティアナを救えるはずだ!」
「分かったわ。この石は…、本当にすごい石なのね。
じゃあ、早速。」
そう言ってレティシアは、まずはティアナの心層に入ることが先決と祈り始める。
ラルスはレティシアの行動を確認すると、戻ってくるであろう華那とジルヴェスターとの戦いのため、治癒魔法をかけつつ、ティアナとエドヴァルドの体を纏う魂を天に送り出す祈りを始める。
しばらくして、石の導きと母の願いが通じ、ティアナの心層に入りこむことが出来たレティシアはティアナに語りかける。
『ティアナ…。ティアナ…。
お母さんよ、どこにいるの?ティアナ?』
返答はなく、ただ光のない真っ暗な闇の中に静かに緊張で早くなった鼓動が響く。
『ティアナが反応しないなんて…。』
レティシアは、心層で語りかければティアナは戻って来てくれるものだと簡単に思っていた。しかし事はそうは単純なものではなかったらしい…。
その為、レティシアはどうすればいいか分からなくなっていた。
時間は刻一刻と過ぎていく。その焦りが思考を妨げ、冷静な判断を阻む。
緊張が体を震わせ、汗が額から滴り落ちていく。しかしそんな状況であっても、愛する我が子を救うため、何とか思考を正常に戻さなくてはならない。
幼きティアナが望むもの…、逆に自分がその状況だとしたら何を望むか…、
必死に考えを巡らせるレティシア。そして、
『レティシアが望むものを意識の奥深くに流し込めば、きっとあの娘はここに戻ってくるはず…。
なぜか分からないが、そう感じたレティシアはそれのみに思考を集中させていた。
そして、ある1つの考えにたどり着く。
それは…感じた事のない『両親からの愛情』ではないかと…。
これはティアナ自身が望んでいる事でもあるだろうが、一方でレティシアとラルスとしては、我が子に愛情に満ちた3人での生活を味合わせてあげたかった思いは強い。物心つく前に離れ離れになってしまった現実を今さらだが悔やむレティシア。
そこで、母は娘の心層にイメージを送る。現在の3人の姿で送る日常生活のイメージを…。
3人一緒に食卓を囲む。
3人で買い物に行く。
3人でお出かけをする。
3人掛けのソファにティアナを真ん中にして座りテレビを見る…。
3人で同じ夢を見る。
そんな何気ない日常をイメージする。
そんな大それたものでなくていい。ありふれた…、でも叶うことのなかった日常が、おそらく今一番ティアナが望んでいる事だろうと…。
ティアナの脳内にイメージが送られた頃、ティアナを安全な場所に移そうと抱き上げたラルスは、娘の目から涙が一筋こぼれていくのを確認する。
「ティアナ!」
ラルスは声をかける。しかしまだ応答はない。
その様子を見ていたレティシアは、
『あなた、少しだけこちらに来て。』そう言ってラルスに自分と娘の心層に入るように促す。ラルスはそれに、
『分かった。』と静かに答え、周りの状況を確認してから心層に入りこむ。
先ほどティアナの心層に流したイメージと同じものを見たラルスも込み上げるものを感じ、目に涙を浮かべる。




