能力の継承~父から娘へ~
ティアナは華那との戦いが始まる前に、すでにどう戦うかを考えていた。ラーニーにより洗脳され、12支人との訓練を何度も繰り返し、自分の潜在能力に目覚めたティアナ。
『目で見た攻撃を完全にコピーできる』
自分にはこの能力が備わっている。
それを知ってからは、いかなる訓練、実戦でもまずは見学に徹することにした。
その力は父ラルスが科学者時代、自分を実験体として行ってきた能力開発で得た力の1つだった。ラルスはその当時自分に秘められた力がある事をひょんなことから知り、様々な装置や兵器の開発の最中、同時に自分の能力の開発にも力を注いでいた。
本来なら回生の間際に異能の力を持つ12使徒たちはその本来の力に目覚めていくのだが、ラルスは研究者時代に少しずつではあったがナータン王としての能力に目覚め始めていた。
(それは想定外だった最悪の化学兵器の誕生、そしてナータン滅亡の未来という新たなページが生まれた事により引き起こされたのではないかと、後にラルス自身が語る事になるのだが…。)
その秘められた力に気付いたラルスは、化学兵器の開発の傍ら、この力が今後の自分の人生にどう役立つかは分からない状況であったものの、自分の能力の解放、開発に力を注いでいたのだった。
そして、自らの肉体を使って行った様々な能力の開発が、ティアナの今の能力に影響を与える事になっていたのだ。ティアナはそのラルスが会得した力を完全に習得して、それをもとに戦っていたが、それは言わば遺伝による能力の継承であった。
※※※
今回ティアナが考えた戦法は、前回の戦いでサイファが華那にかけた戦術をもとに新たに考え出したものだった。
それはラルスからの力の継承であるこの『完コピの能力』をベースに、サイファの能力である、
【人に行ってきた悪行を、自分に味合わせる力】
を華那の心層に入り込んで行う作戦で、華那が朔に行ってきた虐待の数々を自らが味わうことでその罪を償わせようとするものだった。ティアナは子供心に、華那が許せなかったのだ。
『もし自分が朔兄ちゃんの立場だったら…』考えただけでも生きた心地がしない。
『絶対に許さない…』父ラルスから話を聞いた時点で、もし自分が華那と戦う機会があったら…と様々な事を考えていたのだった。
しかし、この術には弱点があった。
それはその力を発動している間は、その本人が無防備になってしまう事だった。
だから護衛の力が非常に重要になってくる。ラルスはティアナからこの作戦を聞いた時点で、エドヴァルドに対し、自分の護衛とティアナを護るためにジルヴェスターとの戦闘も視野に入れておいてほしいと伝えていた。




