変わらぬ想い~一途~
佑依の心層は莉月によって、再び記録会の後、部室の前で衝撃の事実を聞いた直後に引き戻されていた。
そこに莉月は玄人が入り込めるようにする。部室の前でしゃがみ込む佑依のもとに近寄る玄人。
「佑依、こっち来て。」
玄人はそう言って、立てない佑依の両脇を抱え立たせると、そのままの状態で中庭まで佑依を連れて行く。
噴水の前に座らせ、自分もその隣に座る。すると佑依は無意識に玄人の肩にもたれ掛かる。それに気づくと片手で佑依の肩を抱き、もう片方の手でその頭を撫でながら、
「佑依…。しばらくこのままでいよう。」
「…。」
頷くと佑依はうつむいたまま静かに泣き始める。その雫が佑依の足に零れ落ちると、玄人は頭を撫でていた手を佑依の手に重ね、その手を握る。
「なあ、佑依。突然だけど…、俺はどんなお前も好きだ。」
玄人は握った佑依の手を見ながら、落ち着いたトーンで話し始める。
「今はそんなこと言っても…。受け入れられないよな…。
ってか、お前がこういう状態じゃないと、こんな風にストレートに言えない自分が情けないけど…。
でも、もう迷わないって決めたから…。
絶対現実に戻ったらお前の洗脳解いて、そしてすぐにお前に気持ちを伝えるから…。
だから…、お前の心の奥底にある、ありとあらゆる負の感情を解放したい。でも、どうやったらいいか分からない…。
それが…、また情けないよな。」
自分で自分に苦笑しながら玄人は続ける。
「お前に初めて会ったのは、小学1年生の時か…。
お前は隣の席の世話好きの女の子だった。
何やらせても出来ない俺を、いつも面倒見てくれて、先生も俺にはお前が必要だと思ったんだろう…、
席替えの時は、俺たちはセットで動かされてたもんな。
初めのころ俺は、お前の小言がうるさくて、俺は自分が何やっても出来ないことを棚に上げて、お前と隣は嫌だとか言ってたけど、そのうちそれがないとなんだか物足りないって気づいて…、5年生のクラス替えでお前とクラスが離れた時はほんとにさみしかった。
だから、走る事が好きなお前の興味がありそうな陸上クラブに入れば、毎日登下校も一緒に出来ると思ってお前を誘ったんだ。
お前はすぐに入部してくれて、俺がどんなに嬉しかったか…
お前には分かんないよな…。
だから毎日学校が楽しくて…。
でも中学生に入ってからは、お前もなんだか一丁前に色気出してきて、他のクラスの男と付き合うようになったりしてさ…。
俺にとっては登下校のお前の恋愛相談が地獄だった。
それでも、どうしてもお前といたかった俺は、学年最下位の成績をお前の志望校に合わせるために、20位以内まで何とか上げた。
いや~、あんときは辛かった。
俺の一番苦手な勉強ってやつを、お前と一緒の高校生活を送るために毎日5時間以上、平日も勉強したんだから…。
俺はお前に見合う男になりたかった。
馬鹿な俺じゃお前に釣り合わないってな。
でも、その時とことん努力して、自分の目標を達成するってことの喜びを感じた。
だから、それだけでも俺は成長したと思う。
全部お前のおかげだな…。
俺が俺らしくいられるのはお前のおかげなんだ。




