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恋までも?~全て莉羽のせい~

莉羽への劣等感、嫉妬にまみれている自分を自覚してからというもの、さらに何事も上手くいかなくなって、こんな自分にさらに嫌気がさしていた。


莉羽に対するコンプレックスの塊に成り下がった自分をどうにかしたい、何とかしたい…。


勉強に関しても、部活に関しても、何もかも莉羽には勝てない自分を変えていきたい…。


いや…待って。


もし莉羽に何か悪いことが起きたら、私が莉羽の上をいけるようになるんじゃない?


そうだ!


莉羽が不幸になれば、私のこんな気持ち、なくなるに違いない…。


私は日々こんなことばかり考えるようになった…。


※※※


そう、私は中学の時から一度も莉羽に勝てたことがない。


一度も…。


でもいつも僅差。


だからこそ、今度は絶対に負けたくないと…、受験勉強で成績が少しくらい落ちようと、走ることだけは欠かさなかった。


いつか必ず莉羽に勝ちたい。


ただこの一心で私は動いてきた。


でも私は…、


完敗した。


1週間後に行われる大会に向けての記録会で…。


しかもかなりの大差で…。


走り終わった後、私は立っていることもやっとだった…。どうにか足を踏ん張って立っていた。


でも心は…、どうしようもないくらいに崩れていた。


しかし、同じ部活の仲間である以上、ここで莉羽を祝福しなくちゃいけない。そこにはまだ冷静な私もいた。


この記録会がその種目の学校代表を決めることになっていたので、もし負けても心から祝福しようと心に決めていた。だから私は進まない足を何とか前に、前に持っていき、莉羽の前に立ち、


「おめでとう。」と声をかける。


私はその時どんな顔をしていたのだろう。


莉羽が私の目を見た瞬間、さっきまでの笑顔が一瞬曇ったように見えた。


それは…私が泣きそうな顔をしていたから?私が心から祝福できていないことに気づいたから?


莉羽にそう思わせた自分も嫌だった。心からおめでとうと言えなかった自分も嫌だった。


そんな私の心を知ることもない周りの部員は驚き、ざわめいていた。


莉羽の記録が超高校級だったからだ。それに沸き立つ部員がいるその場を後にして、私は部室に向かう。


部室のドアの前に立つと、中から男子の声が聞えてきた。


「宮國の奴、さっきとんでもない記録出したらしいぜ。」


「まじか!あいつ、すげえよな。勉強も学年トップクラスだろ、それに陸上も全国レベルだし。」


「なんと言ってもさ~、性格も良いし、よく見ると可愛いよな。」


「ははは。とうとう吐いたな。」


「何がだよ。」


「お前、中学の時から宮國の事好きだろ?」


「はっ?何言ってんだよ。なんで俺が…。」


「お前、いつも一緒にいる俺が気づかないとでも思ってたのかよ。ははは。」


「嘘だろ…?」


「嘘じゃねえよ、お前も嘘が下手だなあ、翔。」


『えっ?翔君!』私は驚きのあまり、声が出そうになるのを慌てて口を塞いで止める。


如月翔。


私が中学の時から思いを寄せている3組の陸上部員だ。気持ちを伝えたいと思いながら、どうしても伝えることが出来なかった想い人。


私はもう立っていることができなくなってその場に座り込む。


『えっ?何?


勉強、部活だけじゃなく…、恋まで…?


何もかも莉羽に持っていかれる…。何なのよ、莉羽…、どこまで私の欲しいものを奪って言ったら気が済むの?』


小学生のころは心から大好きだった莉羽を、今は妬み、恨み…、くすぶっていた心が急激に大きくなっていくのを自分でもはっきり感じる。


『私は莉羽が憎い。


莉羽のせいではないのはわかってる。でも心が、心が…もう壊れてしまいそう…。


許せない、莉羽…。』


その時だった。


『あら、佑依ちゃん、辛そうね。こちらに来れば楽になるわよ。』


私の心に突然響く女性の声。



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