砂時計~回生までのタイムリミット~
目の前で繰り広げられる惨状に心を痛めているのはそれぞれの星の民だけではなかった。私の仲間たちも、現実では考えられないこの惨劇をなかなか理解できずにいた。
リディアとミディアは共に涙を止めることが出来ず、気丈に振る舞っているアラベルにいたっては体の震えが見て取れた。そんなアラベルを支えるために彼女の肩を抱くロイの表情も曇っている。
ここにいる誰もが、不安と恐怖と怒りを抑えようと必死だった。この現状を理解した凱は、各星の状況を全て把握し対策を講じるまでの間、仲間たちにしばしの休憩を取るよう伝える。
そうでなければ、この事態に彼らが立ち向かえない事は明白だった。時間が迫っているのはもちろん承知の上だ。しかし、それ以上に仲間たちの心が崩れかけていた。
凱がみんなに招集をかけたのは、それでもたった3時間後のことだった。本来ならもっと休憩に時間を取りたかったのだが…、それがギリギリの時間であり、凱にとって苦渋の決断だった。
「どういう配置で戦うんだ?」気持ちを何とか切り替えたフィンが凱に尋ねる。
「それをね、さっきまで凱と話していたんだけど…。実は回生までの時間を計る砂時計が…。」
と凱に代わって莉月はそう言って古びた砂時計を皆の前に出す。
「それ、何?」ミディアが莉月の隣に来てじっと見つめる。
「ああ、そうこれは…、みんながエデンで戦ってるときに、ログがエデンの中に入って持ってきてくれたの。」莉月が説明すると、皆驚いて、
「あの状況でエデンの中に入れたの?ラーニーはあの中にいたんでしょ?」リディアが尋ねると、
「僕、前の回生の時に、莉月さんの遣いとして動いていたからあの中は熟知してるんだ。だから、ササっと入って、ササっと出てきた。」ログは笑って言う。
それには一同驚きの声を上げて、
「確かに中を熟知していたとしても…、ログってスゲーな。」玄人が関心する。
「そうなの、それでササッと取って来てもらったの。でもこれも回生前の記憶だし、思い出した時は、今も砂時計がそこにあるかどうかは確実じゃなかったんだけど…、ログが行ったらあったというから良かったわ。本当に…。実はこれを思い出したのもつい最近で…。」響夜が母の後に続けて、
「これは、回生までの時を計る砂時計だ。この砂が落ち切った時、回生が発動する。つまり、回生までのタイムリミットが分かる。」
それを聞いた一同は改めてその砂時計を見ると、砂が落ち切るまであとわずかだった。
「もう時間がないってこと?」アラベルが不安げな顔で聞く。




