私の企み~吉と出るか凶と出るか~
それと時を同じくして、結婚式の途中に拉致され、先の戦いで洗脳が解けたばかりのエルフィー皇子と私は、その後の状況を共有する。
「私が拉致された後、そんなに状況が変わっていたのですね…。」
「はい。あまりに多くのことがありすぎて…、私もみんなに言えませんが…正直混乱しています。
でもやるべきことは一つ。この世界を救うことです…ね。」私は落ち着いた口調で話す。
「そうですね…。正直、この状況に面食らっています。何せ、式の途中から記憶がないもので…。」
エルフィー皇子は苦笑いしながら答える。
「そうですよね…。どうお話ししたら…と思っているのですが…。
私もあの直後、自分が何者であるのかを知りました。神遣士である自分を受け入れるのにかなり戸惑いと不安、恐怖、様々な気持ちが入り混じって…、いまだに受け入れられないところもあります。
でも、ここで私が意を決さなければ世界が終わる。
そう考えたら自然に前を向いていました。私にはその間にたくさんの仲間ができ、みんなに助けられています。皇子にもファータのため、世界のためにその力を貸していただければと思っています。」
私は胸の内を心のままに話す。
「姫…、私はあなたと生きていきたいと強く願っていた男です。当然の事ですよ。お任せ下さい。」
エルフィー皇子はにこっと笑う。
「皇子、ありがとうございます。」
【ガチャ】私と皇子のいる部屋に莉亞が入ってくる。
「莉羽~?私のこと呼んだ?」
莉亞はエルフィー皇子がいることを知らず、気を緩めて入ってくるが、エルフィー皇子がいることが分かると、目が飛び出しそうなくらいに驚いて、一度部屋を出て行ってしまう。それから、こっそり中を伺うようにして入ってくる。
私はそんな莉亞の様子に、
「びっくりしたよね?莉亞。」
「莉亞…?ですか?」エルフィー皇子が不思議そうに尋ねると、
「はい…、そうです。私は莉亞です。」莉亞は顔を真っ赤にして恥ずかしそうに答える。
私はそんな莉亞の様子を見て、ニヤニヤしながら莉亞に話しかける。
「莉亞、ちょっとお使いに行ってほしいんだけど…。」私が企み笑顔で言うと、
「えっ?何、その顔…。お使いに行くのは良いけど…、どこに行けばいい?
って~、何その顔~、ほんとに怖いからやめて~。」
私の笑顔に怪訝な顔をして答える莉亞は、もちろんエルフィー皇子の様子も横目でチェックしている。
「どこって…、ファータの王宮の中庭。」
私はにんまり笑ってそう言うと、そのままエルフィー皇子の方を向いて、
「エルフィー皇子も莉亞と一緒に…、お願いしてもいいですか?」突然振られた皇子は、
「え?私ですか?」と動揺して答える。
「はい。」そんな彼に私はこちらにも、にんまりと答えると、私の意図に気付いた莉亞が、
「今すぐに?」顔を赤らめて確認する。
「うん。今すぐ。そして2人で、行ってほしいの。」私は懇願するように伝える。
「…。分かったけど、何をすればいいの?」莉亞が嬉しさを一生懸命抑える感じで聞いてくる様子に、顔のにやけが止まらなくなってきている私は、
「行けば分かるから…。」急かすように笑顔で言う。
「全く莉羽は…。」そう言って半分呆れ顔、半分嬉しさで顔をほころばせながら答える莉亞は続ける。
「じゃあ莉羽、行ってくるね。皇子、すぐに出れますか?」顔を真っ赤にしながら尋ねる莉亞。
「あっ、ええ、行けますよ。」
その言葉を聞くと、すぐさま莉亞は祈りに入る。そしてものの数秒で2人の姿が消える。
「おい、何をしに行かせたんだ?」その様子に気づいた凱が入ってくる。
「ちょっと思い出したことがあって…。」にやにやしている私を見て、
「悪だくみか…。」と苦笑いする凱。
「凶とは出ないと思うけど、吉とで出る事を祈る!」
「そうだな。」私たちは2人、自然に微笑んでいた。




