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偽りの懺悔~性悪な魂~

さっきまでの息絶え絶えな様子から一変して、何者かが取り憑いたかのように力強く、そして不穏な空気を漂わせながら話す王の様子に、ただならぬものを感じた凱は、ひそかに魔力を上げ、関与している者の有無を確認する。しかし、微塵も他者の介入を感じることができなかった。


それは紛れもなく、ハラール2世、彼の心の声だったのだ。


『死を目の前に多くの人は、出来るだけ善人でこの世での生を終わらせたいと願うかもしれない。先ほど、私とスヴェンに伝えた懺悔の言葉は、現世での自分の魂を少しでも清き状態で昇天させようとした、全て虚言なのだ。しかし、最終は本来の魂の本質が現れ、先ほどの「きれい事」は何ら意味を持たないのだ』


と、父とスヴェンのやり取りを心層で聞いていたリーゼはさらに大粒の涙を流す。


「そんな…。」


凱はメルゼブルクでの父の真の姿に衝撃を受け、それ以上言葉が出なかった。


1度はクラウディスと共に、魔導書盗難の件で自分を反逆者として扱い、処刑までも言い渡した父。しかし、それはあくまでラーニーに洗脳されているが故の出来事だと思っていた。


しかしそうでなかった。


この国の最高支配者であり、国民から崇め奉られ、唯一無二の存在であるメルゼブルクの国王の、今の言葉全てが嘘偽りない彼の考えそのものだった。凱にとっては、尊敬していた父が自己保身の塊だったことを思い知らされたのだった。


そんな凱の隣で、スヴェンは堪えきれない怒りに我を忘れていた。


「お前…、今のは本気か?正気で言ってるんだな?」そう問いただすと、少しずつハラール2世に近づいていく。


一歩一歩その怒りを踏みしめるように、


「お前の自己中心的思考でどれだけの人が苦しみ、悲しみ、そして死んでいったと思ってるんだ。俺の家族もそうだ。お前とメルディスティアードの利得の為だけに殺された。お前の心の中に、そうやって死んでいった人々への罪悪感はかけらもないのか?」徐々に近づくスヴェンに、一瞬ひるんだものの王は、


「そんなもの考えるわけなかろう。


全ての民はわしによって生かされ、わしの為に死ねることを喜びとしておるのだから。


そなたもそうじゃ、そもそもあの男の息子だからとわしが取り計らって、あの化け物の従者として生きながらえさせてやったのじゃ。


殺すよりは、まだ闇の中でも生きていたほうがましだろうて…。そして生き地獄をその身で味わえるようにと、わし自ら決めてやったというのに…、その恩をお前という人間は仇で返そうというのか…。


なんと愚かな…。罪人の息子であっても、お前を生かしてやったのだから、ありがたく思うのが道理だろうて!


この恩知らずが!」


そう言い放つと最後の力を振り絞って、自分の周りに最大級の結界を張る。


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