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スヴェン~権力者の欲望の犠牲者~

一方の私の条件は、私が会得していない魔導書の魔法使用者を私と見せかける事。つまり、私が公務で魔法使用を必要とする際、奴にその魔法発動者を私と見せかける事だった。


私はそれで何年も国民をだましてきた。国王としての資格をはく奪されないように、必死だったのだ…。


そんな中すくすくと成長していくクラウディスだったが、ある日、まだ幼子である彼の中の魔力の成長が限界に達したのを感じた。


私は私同様に能無しのクラウディスの気持ちが痛いほど理解できた。無能な王ほどみじめなものはいない。しかし第1皇子として生まれてきた以上、私はどうにかクラウディスを後継者として立たせたかったのだ。

王宮に出入りする貴族の派閥争いがどうあろうと、最終私とメルディスティアードの意見が合致すれば、次期王位はクラウディスのもの。その為、奴に何があってもクラウディスを支持するよう取り付けたのだ。


そして、もう1つ…、いやその前に…、

メルゼブルクに安置しているメルディスティアードの亡骸をここに持ってきてくれ…。彼に今までの私の過ちを謝罪せねばならん…。それまで何とか生き延びねば…。」


そこまで言うと、王は突然せき込み、話すことができなくなってしまった。そして力なく、目を瞑り、気を失うかのように眠ってしまった。


もう1つの条件に付いて聞きたかった2人だったが、ここまで衰弱してしまっている以上、仲間による王への治癒魔法に今は頼るしかなかった。


部屋を出て、莉亞にメルゼブルクに安置されている、メルディスティアードの遺体をここに移動してもらいたいと告げるリーゼ。殺害されて以降、その遺体の謎を解き明かすべく、凱も私も様々な魔法を試みたが、それは無意味だった。魔法ではない得体のしれない強力な力によって体を生前と同じように保っているその謎を解明するため、メルゼブルクでの戦いの時に回収しようとしたが、遺体はすでに安置所から消えていたのだった。


私は、ラーニーが戦いに乗じてエデンに移動させてしまったのかと思っていたが、メルディスティアードである父は、ラーニーに自分の力を奪われないように、闇の中に自らの遺体を自ら新しく解放した魔法の力で隠していたのだった。そして、先の戦いの後、ラーニーの手が及ばないと分かり、再び、元々あった安置所に戻したのだ。


とにもかくにも安心した私たちは、王の最期の希望を叶えるべく、メルディスティアードの遺体を私の家に移動させる。


それから自室に入るリーゼとスヴェン。父の非道な過去に、心が張り裂けんばかりの思いを、病床に伏している父の前では一生懸命堪えていたリーゼの心は、怒りと悲しみと…、様々な感情が入り交じり、どうにもならなくなっていた。それを察したスヴェンは、リーゼを支える。


「リーゼ様。少しお休みください。このままではあなたが倒れてしまいます。」


リーゼをベッドに寝かせ、


「飲み物でも持ってきますね。」と言ってその場を離れようとしたスヴェンに、


「ここにいて、スヴェン。」と涙目になりながら求めるリーゼ。


その姿にいたたまれない気持ちになったスヴェンが、ベッド脇に椅子を持ってきて座る。そしてスヴェンの手を探すリーゼの手を取って握るスヴェンの手から、これまで感じたことのない怒りが伝わり思わず手を離すリーゼ。


「スヴェン?」


リーゼは、常に温厚で冷静なスヴェンの怒りに違和感を覚え起き上がろうとするが、それを再び寝かせるスヴェン。


「私の怒りが伝ってしまったようですね?」


スヴェンは座り直し、リーゼの右手を両手で包んで話し始める。


「リーゼ様に話さなければならないことがあります。私の家族の話、私がなぜ、リーゼ様にお使いするようになったのかを…。そして、先ほど王のお話から、私が長らく抱えてきた謎の全ては解き明かされ、私のすべきことがはっきりしたのです…。」その口調から、ただならぬ思いを感じたリーゼは一言、


「分かりました。」と言って静かにうなずく。


それからスヴェンはゆっくりと話し始める。


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