ファータ王妃~知られざる国王の正体~
その頃アースフィアでは、いぜっきーと今後の行動計画を練るために、凱が数日間いぜっきーの家に缶詰めになっていた。そして、母との再会を果たしたサイファとその双子の妹もメルゼブルクから戻り、凱の帰宅と共に再び戦況の共有を始める。
まず最初に、コンラードとヴァランティーヌの戦いについてサイファが皆に話し始めようとしていた。仲間の力により治療に入ったコンラードだったが、治療に集中する為に魔法で眠らされており、その戦況を代わりにサイファが説明することになったのだった。
「これから話すのは僕がコンラードから聞いた話と戦闘中に2人が話していた事で、大まかな内容になっちゃうけど大丈夫、かな?」
サイファは少し不安気に凱に尋ねると、凱はうんと頷き、サイファが話し始める。
「幼い頃、事故で両親を亡くしたヴァランティーヌは、その事故の原因を作ったファータ王に償いとして、自分の子供のように特別ともいえる待遇で育てられていたらしいんだ。
ファータの大樹と言われる王だからこそ、自分のせいで親を失った幼子を放っておくことができなかったのだろうね。立場上、公に養子として迎えるわけにもいかないこともあったんだろうけど…、その待遇はとても奇妙なものだったらしい…。
王宮の奥、王の異能の力のみで出現する秘密の扉からしか入れない一室に、隠されたような状態で生活していたヴァランティーヌの存在は、王の側近数名しか把握していなかったようで、外に出る際は、表向きは使用人の子供として扱われていたらしいけど…、不思議な状況だったらしい。
もともと国王は子供に恵まれず、継承問題で前国王である王妃の父からかなりいびられていたらしかったんだけど、不妊の原因は国王にあると王宮内に広められ、かなりのストレスを抱えていたんだって。そのストレスが王妃に向いて、王妃の心も疲弊していたらしい。
そんな中、ようやく妊娠を果たし、莉羽が生まれて…。
継承者である子が生まれた事に関して、最初こそ喜んでいた国王だったけれど、それが女の子であったことから、
『男を産めと言っただろう。何も出来ない無能な女め。』
とか、王妃に聞くに堪えない暴言を吐くようになり、それがエスカレートして最終的には暴力が日常茶飯事になったって。
そんな日々を耐え忍んでいた王妃だったけれど、終いにはそれを苦に彼女は身を投げたって話だよ…。
その後、母を亡くした莉羽の乳母となる事を強制されたヴァランティーヌが成長し、年頃を迎えるころに、彼女は国王の極秘扱いの愛人になったみたいだけど…、父性を求めた相手の性のはけ口を強制されたヴァランティーヌは国王を恨み、一方王女として生まれ、大切に扱われる莉羽への嫉妬が次第に大きくなっていったって…。
でも本当のところ…、彼女が王宮の秘密の扉の奥で生活を始めたころにはすでに…、国王のお手付きになっていたんじゃないかって。不妊の原因も国王のその性癖じゃないかって内々では噂されるようになっていたみたいだけど…、彼女の国王への純粋な思いがそんな小さなころから踏みにじられていたとしたら…、彼女の恨みや嫉妬はかなり大きく、淀んだものになっていてもおかしくはないよね…。
その負の感情が渦巻く彼女の心にラーニーがつけ込んだってコンラードが言っていたよ…。」




