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妻の後悔~裏切りで気づかされる真の愛~


『愛するラルスへ

 

 この星が今まさに破滅を迎えようとしている今、私はあなたへ最初で最後の手紙を書いています。あなたが私の為に用意してくれた装置が壊れてしまった今、私はもう2度とあなたに会うことは叶わない…。けれど私とあなたの愛する娘だけはあなたの元に送り届けたい。そして、あの日の真相も…。あの日何があったのか…、もう自分の口から伝えられない今、私の全ての想いをこの手紙につづります…。だから…、必ずあなたの元に届くことだけを願い、祈ります。


 私が初めてあなたとの結婚を勧められた時、正直怖いと思いました。生まれも、育ちも、学歴も、仕事も全て完璧なあなたの写真には、あなた自身が見えなかった。あなたの目は機械の様に冷たく感じられたからです。でも、私は両親の進めるまま、あなたとの結婚を決めました。あなたと結婚することで、将来が保証されることを喜ぶ両親のためにです。そこに私の意思はありませんでした。


それからのあなたとの結婚生活は、想像した通り心寂しく冷たいものでした。あなたは仕事だけを愛し、私を愛してくれることはなかった。私は自分の家であるのに、自分がそこにいないようにずっと感じ、孤独で心が壊れそうになっていました。

 そんな時、両親に私の居場所を聞いた幼馴染が家を訪ねてきて…。久しぶりに会った私と彼は、昔話に花を咲かせて…。また来るという彼の言葉に私は喜びさえ感じていました。それから、あなたが仕事に行くと彼が家に来て、いつの間にかそういう(・・・・)関係になっていました。それが当たり前の生活になったある日、彼の奥さんが家に押しかけてきました。私は、もうこの関係を終わらせようと彼に別れを告げ、もう2度と家に来ないでと言いました。


 それからというもの、私はあなたへの罪悪感でいっぱいでした。あなたの心に私がいないとはいえ、不貞を犯している自分、あなたを裏切っている自分に自殺さえ考えました。それがある時、あなたがこう言ったんです。


「ここ最近元気ないね。体調悪いの?」と…。会話のない私たちは、お互いの事に関して無関心であると思っていました。だからあなたも私の事は見ていない、見えていないと思い込んでいました。でも、あなたは会話せずとも私を見て、気にかけてくれていることにその時初めて気づかされたんです。


 だから、私は最後の賭けと思い、雷を理由に歩み寄ることにしました。もし断られたら私は死ぬ覚悟で…。それにはとてつもない勇気が必要でした。あなたがどんな反応をしてくるか、想像するだけで怖くて怖くて仕方なかった。

 でも、あなたは私を受け入れ、そしてそれからは、これ以上ないというくらいに愛してくれた…。


私は幸せでした。


その後、ティアナを授かり、その幸せは形となって私とあなたのつながりをより強いものにしてくれました。


私は、あなたをこの上なく愛していた…。


 それなのに…、幼馴染はまた私の元にやってきた。彼はうちに出入りをしているときに合いカギを作っていたらしく、あなたが仕事に行って間もなく、彼が突然家に入ってきて、抵抗する私を…。

 そして、その時あなたが帰ってきた。薬をうたれた私は話すこと、動くことができずにただ茫然として、家を出て行くあなたの姿を見ることしかできなかった。それから私は、この再び汚れてしまった心と体であなたに会うことはできないとあなたとの接点を断ちました。


でも…、あなたに会いたかった。


あなたに抱きしめてほしかった。


あなたにキスて欲しかった。


3人で一緒にいたかった。


でもこれが、私の過去の罪の代償だと、私にはもうあなたに会わせる顔がないと覚悟を決めました。


ナータン最期の日になる今日、私は今、装置の前でティアナを見送ります。私の装置を動かしてみようと思ったけれど、あなたが書いてくれた説明書通りに何度やっても起動しないので…、おそらく壊れてしまっているのでしょう…。だから私はここまでです。私はこの先ティアナを育てることができません。ごめんなさい。


そしてあなた…。


こんな私にティアナという宝物をありがとう。


愛してくれてありがとう。


私もあなたを愛しています。


ありがとう。心からの感謝を…。』


その手紙を胸に当てて涙を流すラルス。


そしてその他にも、ティアナの誕生日の映像を残したメディアが入っていた。ティアナもラルスと母親に愛されている自分の姿に涙する。


「ティアナ…。」


「パパ。」そして強く抱き合う親子。



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