父と娘~絆をつなぐもの~
そのころ、ラルスは洗脳が解けた娘ティアナと長い時を経て同じ時を刻んでいた。
「ティアナ…。」
ラルスは娘を抱きしめたいと手を伸ばそうとするが、最後に会ったのがティアナ2歳の時なので、彼女にとって自分はただの見知らぬおじさんかもしれないと躊躇い手を止める。
すると逆にティアナがその手を取って、
「パパ!」そう言って突然抱きつく。
ラルスは驚いて、エルフリーデの顔を見る。するとエルフリーデは笑顔で頷き、ティアナの行為を受け入れるよう促す。ティアナは父であるラルスの事を覚えていなかったが、その顔を毎日欠かさず見ていた為、洗脳が解けた今、父の顔は容易くわかっていた。
一方、赤ちゃんの時以来の娘の体温を感じて、ラルスはこの上ない喜びを感じていた。
だが、どう接していいものか…恐る恐る娘を抱きしめるラルスであったが、胸の中で自分の顔を見上げる娘の無邪気さ、その愛おしさに戸惑いも消え去り、抱きしめる手に自然に力が入る。固く抱き合う父娘。
「ティアナ…。ずっと、ずっと会いたかった…。」涙で声にならない。ティアナも声をあげて泣く。
「パパ~、パパ~。」
ティアナは初めて感じる父親のぬくもりに、心地よさと安心を感じていた。ラルスはティアナを抱っこして、頭を何度も撫でては顔を見て、自分の娘をこの手に抱いていることの喜びを感じる。
「ティアナ…。もう離れない。離さない。」そう言ってさらにぎゅっと抱きしめるが、突然、なぜティアナが自分を父だと理解しているのか…、ふと疑問が湧く。
「ティアナ、パパはこの状況がとても嬉しいんだが…、なぜ私の事がパパだと分かったんだい?」
自分の胸の中で顔を見上げて微笑む娘に尋ねるラルス。ティアナはその言葉ににこっと笑って、
「これだよ。」と、胸のペンダントをラルスに渡す。
「これね、私が入っていたカプセルに入っていたんだって、ヴァランティーヌが教えてくれたの。きっとこれは私のパパの写真と、ママからパパに宛てた手紙だって。だから、大切に持っていなさいって。ラーニー様にも内緒にしてあげるって言ってくれたの。だから、毎日パパの写真見てた。かっこいいなって。」
顔を赤らめながらティアナが話す姿にたまらなく愛おしさを感じて、さっきよりもぎゅっと力を入れて抱きしめるラルスに、
「パパ、痛いよ~。」
「ごめん、ごめん。そうかそうか、そういう事か…。」
そう言って笑顔でティアナに微笑みながらも、渡された写真に疑問を抱きながら目をやるラルス。




