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矛盾~戦いのない平和な世界の追究~

それ以降、彼女の最期の姿と男のその言葉だけがずっと頭の中を巡っていた。


戦いが人間を悪にし、悪魔を生む。

そして、悪魔が悪魔を生み、戦いを生む。

戦い、戦争が憎しみを生み、その憎しみが悪魔を生む…負の連鎖だ。


私はそれをどうにかしたかった。ソニアを失ったその喪失感を埋めるため、私と同じような人間を生み出さないため、世の中が平和になれば悪魔は生まれないと…、必死で騎士団団長にまで上り詰め、戦いのない世の中を目指した。


私が団長になって最初にしたことを覚えているか?フィン。」


「…南部の騎士団分団長の不正追及と見せしめのための粛清…。」


「そうだ。中央の力が希薄になりがちな辺境の地における、騎士団の長たちによる不正を止めるために、私はそいつを殺した。もちろん公正な手続きを踏んでな。


でも、私の中にはある矛盾が常について回っていた。戦いのない平和な世界を望む自分と、平和を乱す悪意に満ちた人間を殺してやりたいという自分と…。


そんな精神状態の中、拉致事件が起き始めた。私は平和を乱すこの事件の見えぬ首謀者を憎んだ。


早くこの手で殺してやりたいと思った。


そのときだ「石」が光り、目の前に莉奈が現れた。そしてラーニーの求める戦争のない世界…、理想郷の話を聞かされた。その時の私にはそれがあるべき世界の姿に思えた。その直後だ。私への洗脳が始まったのは…。」


ロイは話し終えると、目を伏せて口をぎゅっとつぐむ。


「そんなことが…。」アラベルの目から涙が溢れる。


「ロイ…。」フィンはそう言ってロイの肩に手を置く。そして絞り出すようにして、


「私にとって、ソニアは全てだった。この手で彼女を幸せにしたかった。ただそれだけだった…。」うつむくロイの目から光るものが零れ落ちていった。


その後、情報共有の時間が終わっても、この場から動かないロイの姿があった。そしてそんなロイを1人にさせることは出来ないとアラベルもそこを離れることなく、傍に居続けたのだった。


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