ロイ~その胸の内~
その玄人の言葉にフィンが、
「玄人!お前、馬鹿なのにやるな!これで佑依の居場所がわかる。佑依が単独行動してくれれば、連れてこれるもんな。でかした!」
そう言いながら久々のみんなの笑顔を嬉しそうに眺めて玄人の頭をポンポン叩く。玄人はやめろと言わんばかりに、フィンの手をどけようとしている。それでもやめないフィンと玄人のこんな子供じみたじゃれ合いでさえも、私たちには必要な笑いであった。未だ続く先の見えない戦いへの不安でいっぱいの私たちの心は、もうそろそろ限界を感じてもおかしくはない状況だった。
「ほんと馬鹿なくせに…、たまにこういう奇跡的ミラクル起こすよね!」私が笑いすぎて涙目で言うと、
「なんだよ、奇跡とミラクルって同じだろっ。バカに馬鹿って言われたくないわ。この馬鹿莉羽!」玄人と私のやり取りにさらに笑いが沸き起こる。
こんな些細な事であったが、それぞれが再会した親友、家族との確執を今だけ忘れ、笑顔を取り戻すことができたのだった。
※※※
しかし、いまだロイの裏切りというこの信じがたい状況を招くことになった理由が分からず悶々としているフィンは、我慢の限界が来たようで、全員の前でロイを問い詰める。
「ところでロイ!なんでこんなことになったんだよ!俺たち、ロイが裏切り者って知った時、ほんとに…、ほんとに…、これ以上ないくらいにショックだったんだぜ。」フィンはロイの胸倉をつかんで言い放つ。
「すまん…。」ロイは申し訳なさそうに下を向き、そしてアラベルの方を見て、
「アラベル…。怪我の具合はどうだ?」アラベルを気遣う。
「うん。大丈夫。」そう答えるがアラベルはロイの顔が見れない。
「そうか…。本当に申し訳なかった。すまない。」いつも自分に笑顔を見せてくれていたアラベルの様子にそれ以上言葉が出ないロイ。
「謝るだけじゃ、答えにならない。ちゃんと聞かせてくれ。ロイ。なんでラーニーに付くことになったんだ?」フィンは責め立てる。
ロイはうなだれて、しばらく動くことも出来ずにいた。そして重苦しい空気が室内に漂い始める。その雰囲気に耐え切れなくなったアラベルが席を立ち上がろうとした時、ロイがその腕を掴み、座る様に促す。そして重たい口を開き、話し始める。
「この話は…、自分の胸にだけとどめておこうと決めていた。でもまさかこの件が私の心の枷になっていたとは思いもせず…。そのせいで皆に迷惑をかけてしまった事…、ここで謝罪したいと思う。本当にすまなかった。」
ロイは再び頭を垂れ、暫く上げることをしなかった。責任感が強い男であるからこそ、自分が招いたこの状況に自分自身も許せないロイの心の内を理解しているフィンが、頭を一向にあげようとしないロイの肩にそっと手を置いて、
「ロイ。今は話せる範囲の事だけでもいい。小さいころから兄弟の様に育った俺たちにその心の重荷を共有させてくれよ。」少し声を震わせながら話しかける。
「ああ、本当にすまない、フィン。ありがとう。」そう言うとロイは顔を上げて、
「少し長くなる。申し訳ない。でも、これだけの事態を引き起こした罪を償う意味でも…、私がなぜラーニーに洗脳されることになったのか話したいと思う。」そう言って一息つくと、
「それは…




