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石のかけら~捜索の手がかり~

 私と凱は、しばらくご無沙汰だった景色を眺めながら歩きながら2人の時間を過ごす。そして毎日欠かさず通っていた河川敷までくると2人大きく深呼吸する。見慣れたいつもの光景に安堵する。

 しかし、木々の緑が新緑から深い緑へと、そして空を自由に飛ぶトンボや草むらから聞こえる虫の声で、季節が春から夏、そして秋に向かおうとしている事に気づく。


「気付かない間に季節は進んでいるんだな…。もうすぐ秋か…。」


そうボソッと呟き凱は、木陰の草の上に寝っ転がる。私もその隣に座り、穏やかな川の流れにしばし心癒される。


「私が夢をリアルに覚えているようになってから、本当にいろんなことがあったね…。」私は少し目を閉じ話し始める。


2人無言で今までにあった数々の出来事を思い出す。しばらくして、凱がゆっくりと口を開く。


「ああ、そうだな…。」


凱も目を閉じ、両手を広げてから横を向いて私の顔をじっと見る。


「どうした?」私は気恥ずかしくなって尋ねると、


「いや、お前はずっと変わらないなって…。」


「えっ?私が?ずっと?」私は驚いて返す。


「ああ。ずっと…、昔から…。これからもそのままのお前でいろよ。」凱は満足そうに話すとまた空を見上げ、


「そう、ずっとな…。」そう言ってまた目を閉じる。少し経つと凱の静かな寝息が聞こえ始める。凱はそのまま眠ってしまったようだ。


 私はその顔を見つめ、凱が目覚めた時、全ての問題が解決し、みんなが平和な日常を過ごせる世の中に…、そしてその時私が凱の隣にいる世界でありますようにと願ってしまう。


「ずっと…ね、隣にいたい…。」私は無意識に言葉が漏れていた事に気付かず、空を見上げている。


凱の口角が少し上がったことも気付くことなく、私はただ凱との幸せな未来だけを祈っていた。


※※※


それから2時間後、家に戻ると、さっきとはテンションが嘘のように、おかしいくらいに爆上がりしている玄人が、私と凱を出迎える。


「俺さあ、さっき思い出したんだけど…、あいつのポケットに俺の石入れておいたんだ!」


私は玄人の言葉に思わず転びそうになるがなんとか立ち止まって、


「は?何やってんの、玄人!それじゃ、あちらさんにあんたの石を渡しちゃったようなもんじゃない?」私と凱が頭を抱えながら部屋に入っていくと、みんなが何事かと私たちを一斉に見る。


「どうしたの?莉羽?」リディアが不思議そうに聞いてくる。


「ごめんね、みんな。騒がしくて…。玄人がね、佑依のポケットに石を入れてきたって言うから…。」


それを聞いた仲間たちも騒ぐ。その様子を確認して、みんなの前に出てきた玄人がニヤッとして、自分の石を目の前に出し、


「じゃーん。これが俺の石。むこうに全部やるわけないじゃん。佑依の攻撃で少し欠けたから、そのかけらだけ入れて置いた。ログがかけらでも入れて置くと、それで位置が分かるって教えてくれたんだ。そこまで俺は阿保じゃない。」


胸を張って言う玄人に、仲間たちが安堵の表情で笑う。玄人の隣にいた凱も、やれやれという顔で笑っている。

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