玄人~伝われ、佑依への想い~
それから、しばし休憩に入る私たち。
私と凱が久々に2人で外に出ようと玄関に向かうと目の前に、肩を落とした玄人が額を壁に押し付けて突っ立ている。そして、
「莉羽…、佑依の洗脳解けたのに…、連れて帰れなかった…。」今にも泣きそうな顔で話しだす。
状況は把握していたので、最後の最後に佑依が連れさられたショックは相当なものであることは推測できる。でもどんな時も玄人が大丈夫な人であることを私と凱は知っていた。だからあえて、思いっきり背中を平手でたたき、
「連れていかれたってことは、変な話、佑依に利用価値があるってことだから、きっと大丈夫。殺されるような最悪な事態にはなってないと思う。玄人の想いは伝えたんでしょ?」私が聞くと、玄人は顔を上げて頷く。それに続けて凱も、玄人の肩に腕を回して、
「何年も思い続けて、やっと告白したんだろ?俺が見るに…、気持ちはちゃんと届いてる。超前向き人間のお前がへこむなんてらしくないから、やめろ。じゃないと、佑依にそんなのお前らしくない!って、それこそ平手食らわされるぞ。」笑って言う。
私と凱は玄人の顔を覗き込むようにして、
「大丈夫。佑依を信じよう!」私はしっかりと玄人の目を見つめて言う。
するとそれまで別人のように自信なさげな玄人が突然、
「そっ、そうだよな。あいつのことだもん。殺しても死なないだろうしな。」と、最初引きつり笑いをしていたが、
「俺のあいつの事だ。大丈夫、大丈夫だ。」そう自分に言い聞かせるようにして、玄人は部屋に戻っていく。
そんな玄人に私たちは顔を見合わせて、くすっと笑う。
「玄人も佑依も幸せになって欲しい。」
「ああ。
嫌っていうほど玄人から佑依の話、聞かされてるし…、あいつの想いが届けばいいな。」
佑依の安否は心配だが、ラーニーにとって、12支人である佑依も必要な存在だから大丈夫と言い聞かせ、私たちは家の周りを歩き始める。




