朔の気持ち~愛か執着か~
「同じ人の親として…、朔の両親は軽蔑する。絶対に許せない。あの母親、最初、洗脳でもされて虐待に走ったのかと思いたかったけれど…、あれがあの女の素の姿なんだと分かって…。父さんもあの場に行って、ぶん殴ってやりたかった。」元々温厚なはずの父も怒りで声を荒げる。
「ここ最近よくニュースで見るけど…、どれほど多くの子供たちが虐待によって命を失い、心を滅茶苦茶にされているんだろう…。だって、自分がお腹を痛めて産んだ子供だよ?それなのにどうしてそんなことが出来るの?人間じゃない…。赤ちゃんなんて、泣くのが当たり前、お尻を汚すのが当たり前だし、幼い子は言ってもいう事聞かないのが当たり前なのに…。
確かに子育て中、頭がおかしくなりそうなことなんてたくさんあった。でも、それでも、可愛い我が子だからこそ、特に母親は、自分のストレスの発散場所を探しながら、もがいて毎日頑張ってる。それが子育てじゃないの?なのに…、なのに…。どうしてそんなことが出来るの?」
母は気持ちが溢れて大粒の涙を流し、父に抱きしめられる。父は母の背中を何度も撫でながらながら、落ち着かせようとするが、朔の心を思うと母の気持ちはなかなか治まることはない。
仲間たちもそんな母の姿を見て、すすり泣き、朔を支えようとそれぞれが気持ちを新たにしていた。
そこに、朔の様子を見に行った莉亞が戻り、
「今はまだ寝ているみたい。リーゼもずっと起きて看てくれてるから、大丈夫だと思うけど…。リーゼの方もちょっと心配だわ。」そう言って、椅子に座って続ける。
「ここ最近、ちょっと気になってるんだけど…。」意味深な言い方に思い当たる節があった私は、
「もしかして、朔の気持ち?」探る様に聞く。莉亞はうんと頷き、
「みんなも見ていて分かってると思うけど、朔はリーゼの事が好き…、というより、もっと…、オーバーな言い方かもしれないけど…、執着してる部分があると思う。
あの子は誰かに自分を気にかけてもらったり、愛してもらった記憶が無いから、リーゼの良心をはき違えるかもしれない。そうなると、リーゼにはスヴェンがいるし…。こじれると思う。」
莉亞の言葉に、仲間たちは少なからず感じていたものがあった。




