伊関先生~孤高の戦士~
朔と華那の戦いの直後、私たちは突如ラーニーによりエデンから放下され、気付いた時には、地上100mのあたりを落下しているようだった。
私が莉亞を見ると、こっちを見てにこっと笑い、余裕で術をかけ始める。私が莉亞に、笑ってないでなんでもいいから早く術をかけてほしいと願っていると、ようやく白い光があたりを包み、全員がアースフィアの自宅に転送された。完全に転送できたのは、おそらく地上20m付近だったように感じる。仲間全員が、早く転送してほしいと冷や冷やしていたに違いない。
※※※
戻ってきたアースフィアでは、空から降ってくる魔物たちを、いぜっきーが各国による武器、弾薬等で迎撃する日々が続いていた。いぜっきーは、各国の軍部と連携を取りながら、国単位ではなく、星単位での総力戦を繰り広げ、被害を最小に抑えていた。
久々にいぜっきーの家に様子を見に行った凱がその状況を見て、
『連絡が来ないとは思っていたけど、先生の能力は俺の想像を超えていた…』と感服する。
「当分任せて大丈夫ですね。」と8台のパソコンの前で監視を続けているいぜっきーの背中に、凱がボソッと呟くと、それが聞こえたようで、
「おい、誰に向かっていってるんだ。当たり前だろ。お前たちの先生だよ、俺は…。」と、モニターを見ながら話すいぜっきーの顔は以前とは比べ物にならないほど、男らしく頼りがいのある男の顔になっていた。
そんないぜっきーの背中に凱は、
「先生。ありがとう。アースフィアを代表して先生に礼を言わせてもらいます。この後もよろしく頼みます。」そう言って一礼して家を出る。いぜっきーは凱のその言葉に、振り向き誰もいなくなったドアに向かって、
「そういうのは目を見て言え…。全く…。」
教え子の感謝の言葉に胸がいっぱいになり、手で口を抑えるいぜっきーの顔は、照れて緩んでいるように見えた。




