悲痛な叫び~僕を殺してくれ~
「兄さんがどうしたいのかは、俺には関係ないけどね…。まっ、最後にどうなってるかな。死んじゃってるかもよ。」狂気の笑顔でそう言うと、朔を包むかのように現れた闇が徐々に広がっていく。
「やっ、やめて!」朔が母親に向けて攻撃を開始する。母が反撃する間もなく、続け様に攻撃されそうになるところに、私はメルゼブルクの主サイファに耳打ちする。
「わかった。」そう言って祈りを始めるサイファ。
すると突然倒れこみ苦しみだす華那。
「やめて。やめて。私は子供たちいこんなひどいことしていない。嘘なんか言っていない、だから助けて…。」母は叫ぶ。
「なんだ、突然…、おい、あんたたち邪魔しないで!」朔がサイファに向かって叫ぶ。
「待って朔。このままじゃあなたが闇に飲み込まれる。」私は朔を取り戻そうと必死に訴える。
「そんなのどうだっていいんだよ。俺はこの女を殺すためにここにいるんだ。あんたたちには関係ない。僕がどんな思いで毎日生きてきたなんて、あんたたちには分からないだろ。毎日が地獄なんだよ。生きていることそれ自体が地獄なんだよ。でも死にたくても死ねない。分かる?この苦しみ、胸が張り裂けそうになって…、何度も死にたいと思ったさ…。でも死ねない…。この世は生き地獄だよ…。
みんなは親の愛の元、幸せに生きてきたんだろ?誰も僕の気持ちなんて分かるわけがないんだ。
ねえ、生きるってって何?ねえ、みんな教えてよ…。生きるって何なのか…。
もうなんだっていいんだよ、自分なんてどうなってもいいんだよ。もう殺してくれ、僕をこの世から解放してくれよ…。」
朔の悲痛な叫びに誰も言葉を発せる者がいなかった。
彼の念がここにいる全ての者に入り込み、それぞれが朔の思いを共有する。愛されるべき命、愛してくれるはずの親、ことごとくすべてに裏切られるだけでなく、ずたずたになるまで傷つけられ、心の重さに体ごと地中に埋もれていくような感覚を。誰もが息を飲み、張りさけた心を取り戻す力もなく、うなだれる。
そんな中、1人だけ朔の念を受けなかった人物が声をかける。リーゼキャロルその人だった。




