狂気の眼~壊された心~
そんな中、自分の本当の兄がラーニーだと知らされた朔の心は計り知れないほど動揺していた。自分は一人っ子と聞かされ、今まで育ってきた上、自分の兄が世界を脅かそうとしている存在など、急に言われても「はい、そうですか」とすぐに納得できるわけがない。
「お前もこんな母親…、いや母親だけじゃないな、こんな最低な両親の元に生まれて不幸だったな…。まあ、お前はこいつらの本当の姿を知るわけもないか…。大事に大事に育てられてきたんだろうからな。だが…、お前にとっては最愛の母親と戦ってもらう。もちろん、死をかけた戦いだ。愛する親子が皮肉にも敵同士とは皮肉なものだが、外野としてはこれ以上の余興はあるまい。ははは。」ラーニーは高らかに笑う。
ラーニーの言葉を何とか理解しようと静かに聞いていた朔だったが、少しずつ状況を理解し始めると、自分の中でも怒りが徐々に込み上げていくのを感じ始める。
「僕があの人と戦うって?」ラーニーから遅れて到着した華那を指さし、朔はラーニーに尋ねる。華那は突然指を指されたことに驚き、
「戦うわけないじゃないの、ねえ、朔。」笑って済まそうとするが、朔の醸し出す空気にそういう状況でもなさそうなことは、華那にも分かったのか身震いしている。。そんな母の様子が、無性におかしく思えてきた朔は、急に狂ったように笑いだし、
「ねえ、ほんとに戦いたいと思ってるのは…いや違う、めちゃめちゃに殺したいのはあなたの方じゃないんですか?兄さん。」不敵な笑みで高らかに笑っていた朔の表情が一変して、兄であるラーニーを試すような目で見る。そのあまりの豹変ぶりに、
「なんだ、お前?気でも触れたのか?」弟に尋ねる。
「気でも触れた?って?いや、僕は狂ってなんかいないよ。」そう言ってケラケラ笑って続ける。




