シルバーの石③~いざ莉羽の元へ~
しかし、ここまでの状況が分からない皇子にラルスが尋ねる。
「皇子が拉致された後、様々な事実が判明しました。おそらく現在の状況は呑み込めていないと思いますが、ラーニーの元にいた時の記憶はありますか?皇子。」
その質問に皇子は首を振って、
「いや全く…。式の途中、莉羽の手を凱に託してからの記憶がないんだ…。でも…、今のこの状況はなぜだか分からないけれど…、少しずつつかめている。おそらく私と契約している精霊たちが、私の深層にその情報を流し込んでくれているからではないかと思ってはいるけれど…。」
不安を持ちつつも、目に少しずつ以前の力強さが戻ってきたエルフィー皇子。
「12支人達は、元々持ち合わせている自らの負の感情にラーニーがつけこんだ形で奴の元に集ってきたが、皇子は奴のとてつもない強い洗脳に支配されていたんですね。それだけ、神仕教の力がラーニーにとっては必要だったということ…。それが洗脳が解けたことで、本来の能力も戻り、精霊たちの助けもあって…現在の状況は掴みつつあるという事なんですね…。精霊たちのとの信頼関係の強さを感じます。」
ラルスの口調が緊張感に満ちたものから、穏やかになっていく。
「ラーニー…、私を拉致したという敵の親玉…。」皇子がボソッと呟く。ラルスは小さく頷いて、
「はい、そうです…。ラーニーというのは、これまでの拉致事件、石や魔導書などの盗難など数々の事件を起こし、この世界を支配しようとしている悪の張本人です。」
「それでは…、私は悪の片棒を担でいたというわけですね…。」肩を落とす皇子に莉亞が、
「今から莉羽の所に行きましょう。彼女も皇子の帰りをずっと待っていました。皆の喜ぶ顔が目に浮かびます!それに莉羽の元に行けば、また新たな情報も入手できます。行きましょう。」そう言って手を差し出す。その手に気付き顔を上げ、
「そうだ…、姫…。莉羽姫は無事で…、本当によかった…。分かった、莉亞。行こう。」
私の名前を聞いて表情が晴れやかになる皇子に、複雑な思いを抱きながら笑顔で返す莉亞。
「莉羽は無事ですが、皇子にとってはショックが大きいことも待っていると思います。でも、まず皇子の無事を皆に知らせることが先決です。」ラルスの意味深な言葉に戸惑う皇子。
「ショックなこと?」
「行けばわかります。」
3人は戦場を移動する。




