精霊フィーリア~少女の絶大なる力~
莉亞は、じんわり胸から血がしたたり落ちていくのを感じながら、再び皇子がラーニーに洗脳されたことを理解する。そして、莉羽の姿のまま、
「エ…ルフィー…皇子…。莉羽の元に…、帰って…。莉羽が待って…。」
全身の力が抜けたかのように、その場に倒れこむ莉亞。それと時を同じくして、突如エルフィー皇子が頭を抑え、しゃがみ込む。莉亞は、最後の力を振り絞って、皇子の耳の中で、洗脳から再び解放するように、私莉羽の声が皇子の脳内にこだまするように術を仕掛けていたのだった。しばらく耳を抑え、険しい表情で苦しんでいたエルフィー皇子は、こだまする私の、
「私の元に早く戻って来てください。エルフィー皇子」
の言葉に洗脳が解除され、目を開け、状況を把握する。目の前で血の海に横たわる莉亞の姿に、
「ルイーゼ!」
洗脳から解放された皇子は必死で血を止めようとするが、流れ出る血は止まる気配がない。
「私は何という事をしてしまったんだ…。」
みるみる顔が青ざめていく莉亞の様子に、エルフィー皇子は表情を一変させ、何かを唱えはじめる。
『ここに御座する治癒の精霊フィーリアよ その力、我が魂に与えたまえ』
そう言って、目を瞑り、腕を広げる。すると、皇子の目の前に、真珠ほどの大きさの小さな光が生まれ、それが徐々に大きくなっていく。光の強さに目を瞑ると、その直後、目の前に10歳くらいの少女が現れる。
『は~い、皇子、私のこと呼んだー?』とちょっと不機嫌そうに、でも呼ばれた事が嬉しいのか、口角は上がっている様子の少女。
『ああ、呼んだよ、フィーリア。君の力を貸してほしいんだ。』
皇子が微笑みながら言うと、
『もう、今日も無駄に美しいわね、皇子は…。』少女はぼそぼそと独り言のように呟いてから、
『全く~、しょうがないわね…。』そう言って、ちらっと皇子の顔を見る。その様子に皇子が微笑み返すと、少し照れた少女は、
『この女の子の治癒ね?皇子のその美しい顔面に免じて…、それに今日は気分も良いし…、あっ、でもね、基本女は治さない主義だけど、力を貸してあげる!感謝してね、お・う・じ!』




