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莉羽の姿で~苦渋の策~

 初めこそ、全く変化の無い皇子であったが、莉亞の姿を視認し、少しずつ攻撃の手を緩め始めた。そして、頭を抱えその場にしゃがみ込む。 


 莉亞自身、自分の策が功を奏したことについては、驚きと共に、自分をほめてあげたい気持ちでいっぱいになるが、同時にそれだけ皇子が莉羽だけを見ていることを改めて確認することとなり、絶望すら感じていた。

 なぜなら、莉亞の策とは、エルフィー皇子の莉羽への思いの強さを利用して、自分の姿・声、全てを莉羽に変えることで、洗脳解除を試みる事だったからだ。単純な策ではあるが、エルフィー皇子の莉羽への思いがどれほどのものか、痛いほど感じていたので、その強い愛がラーニーの洗脳をも解除できるのでは…と考えた苦肉の策であった。


 皇子が攻撃の手を緩め始めたその様子から、莉羽の姿になった自分を見たことで、彼の潜在意識の中にある莉羽への思いが大きく膨張し、その思いがラーニーの洗脳を解こうとしているのが見て取れた。

 皇子は頭を抱え、何かを呟きながら倒れ込み、その額からは大量の汗が滲んでいる。莉亞はこの時を逃すまいと、悶え苦しむ皇子の上体を起こし、抱え、汗を拭き、声をかける。


「皇子、皇子、私です。莉羽です。私はここにいます。あなたの傍に…。


 早く私の元に帰ってきてください…。」


 エルフィー皇子の洗脳を解くためとはいえ、彼の愛する人の姿になり切るしか彼を救うことが出来ない、その複雑な気持ちに今は何とか蓋をしなければと、莉亞は無意識に涙しながらエルフィー皇子の頭を撫でる。


「皇子、帰ってきて。私の元に…。皇子…。」


 悲し気に言葉を発する莉亞の涙が一粒、皇子の頬に落ちる。すると一瞬皇子の体を包み込むように、金色の光が輝く。


 その光に莉亞が目を奪われていた次の瞬間、苦しんでいた皇子の目がゆっくり開き、先ほどの曇った瞳から、いつもの澄んだ美しい光をたたえた瞳に変化していることに気付く。


「皇子?もしかして…、洗脳が解けたのですか?」半信半疑で語りかける莉亞。


 私の姿に化した莉亞が尋ねると、皇子は上体をゆっくり起こし、そしてにこっと笑う。そして、


「ルイーゼ(莉亞)、君か…。私をここまで誘って(いざなって)くれたのは…。


 ありがとう。」


 そう言って、莉亞の手を取る。莉亞は、目の前にいる莉羽の姿の自分に、皇子が気付いてくれた嬉しさで、涙が溢れ答えることが出来ない。


「まさか…私は洗脳されていたのか…?まだ頭がぼーっとしている…。」


 初めこそ皇子は自分の置かれて状況に戸惑いを示していたが、周りを見回し、四方で戦闘が始まっていることを理解すると、


「結婚式以降の記憶が無くて…、いろいろ聞きたいことがあるのだけれど…。」


そこまで言うと皇子は莉亞の顔をまじまじと見て、


「まず聞きたいのは…、なぜルイーゼは莉羽の姿になっているんだい?」


 不思議そうな顔で自分を見る皇子に、驚いた莉亞は動揺していたが、深呼吸をしてにこっと笑い、


「それは…。」


 莉亞がそこまで言うと、突如上空から光の筋が稲妻のように走り、皇子の体に吸い込まれていく。それと、同時にエルフィー皇子の目が赤く光り…、皇子は持っていた剣で莉亞の体を貫く。それは一瞬の出来事だった。

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