皇子~愛しき人~
その隣の戦場では、莉亞とエルフィー皇子が対峙していた。
久しぶりに会った皇子の変わらぬその姿に莉亞は、
『ああ、皇子…。やっと会えた。皇子が連れ去られたあの日から、ずっとその無事を祈り、焦がれる気持ちに蓋をして…、何とか踏ん張ってきたけれど…。ああ、ようやく…。』感極まり涙が頬を伝う。
そんな莉亞は長年の想い人であるエルフィー皇子と戦いたくはないが、エルフィー皇子はおそらくラーニーにより洗脳され、凄まじい力で容赦なく攻撃してくるだろう。全力で戦わないと自分が殺される…と、莉亞は複雑な思いで、何とか彼の異能の力と剣術の同時攻撃をかわしてはいるものの、もともとファータ最強とまで言われた能力のエルフィー皇子にラーニーの力が加わったことで、逃げ切るのも難しく、時間がたつごとに莉亞の傷は増えていく。
エルフィー皇子は、数万と言われる精霊と契約しているため、1度の攻撃にいくつもの精霊を呼び出すことが出来る。その為、莉亞は皇子によって精霊が呼び出されるそれまでの間に攻撃を仕掛けようとしていたが、それ以前に皇子が呼び出している精霊が次から次へと召喚され、その攻撃を受けているために、反撃の機会が全くないのが現状だった。
莉亞の異能の力も、かなりの解放をみているものの、皇子のそれには叶うはずもなかった。
『強い…、強すぎて、手も足も出ない…。どうすればいい?』
自分に問いかける莉亞。
『エルフィー皇子のウィークポイントは…、なんだろう…』
攻撃の8割を何とか避け、後の2割に苦しみながら考える莉亞の頭に、苦しいながら1つの策が浮かぶ。
『これなら…少し時間を稼げるかも…』
そう言うと莉亞は術をかけるための時間を稼ぐために、戦闘の場所を徐々に移動し、木々が多く茂る林の中に身を隠す。そこで自分の周りに結界を張り、術を唱えはじめる。
「これで良し。」
莉亞はそう言うと、林の中から出て、エルフィー皇子の前に出る。
「こんな子供騙しみたいなものでどうにかなるわけじゃないけど…、試してみる価値はあるでしょ。」
我ながら、愚策だなと思いつつも、一縷の望みをかけて莉亞は、その姿で攻撃というよりは、皇子に少しずつ近づいていく。




