生きる理由~彼がくれたもの~
そんな私たちが、彼が非番の日に2人で会うようになるまで、そんなに時間はかからなかった。でも会うのは決まって、町の郊外、人があまり訪れないような場所。私はなぜなのか疑問に思ってはいたが、彼と会える事、それだけでよかった。
これが私の初恋だった。
私は彼にいろんな事を話した。生まれながらの病気の事、家族にどれだけ迷惑をかけて、今後もどうなるか分からない状況であり、このまま自分が生きていく事に、罪悪感すら感じていること。私の心の内を全部さらけ出した。その時彼は言った。
「俺が君の生きる理由にならないかな?」と。
ウブだった私はその言葉の意味を理解するのに少々時間を要したが、気付いた後、どのように反応したらいいのかわからず、下を向いて黙っていた。するとダズフードは、
「顔を上げて。」
と優しく囁き、私の左頬に手を当て、私が驚き顔を上げた瞬間、私の唇に彼の唇がそっと触れた。それは私にとって初めての経験で、あまりの恥ずかしさに心臓がどうにかなってしまいそうで、彼の顔をしばらく見ることができずにいた。そんな私を、彼はしばらく微笑みながら見つめていたそうだ。
それから数か月、彼は私の気持ちを第一に、いつも優しく接してくれた。私はそんな彼の優しさに、初めて感じる胸の高鳴りと、安らぎと、必要とされることの幸せを感じるようになっていった。それを自覚してからというもの、私はかつての自分に伝えてあげたいと思うほど心が躍っていた。私をそのように変えてくれた彼に感謝し、彼の為に生きていきたいとますます強く思い始めていた。
その一方で、酒場の主人ギーグは私の変化に気付きはじめていた。しかし、ダズフードが問題を抱えていることを知っていた為、まず彼に限って間違いを起すことはないだろうと高を括っていたようで、私の父にもその不安は伝えていなかった。
「それ」が露呈するのが、私の18回目の誕生日であった。




