神士教~世界で2人の重責~
全てを把握したラルスがアーロの元に瞬時に移動し、ここで神士教として覚醒したアーロを確認する。もしやと思い、ラルスは戦場を見渡し、瀕死状態だったケイトとエルフリーデの怪我が完治しているのを確認する。先ほどまで横たわっていたはずの2人が、こちらを見て立ち上がっているのだ。全てはアーロの力によるものと理解したラルスはほっと胸をなでおろす。
そして先ほどまでラーニーが憑依していたケイトがラーニーから解放されたのか、アーロの異変に気付き、こちらを見て今にも飛んできそうな雰囲気だ。それに少し口角を上げたラルスは、
「覚醒、おめでとう。神士教殿。」ラルスがアーロに伝えると、アーロは訳が分からず、
「僕、覚醒したの?」と目を丸くして驚いている。状況を理解できないアーロの元に、予想通りにケイトが瞬時に移動し、アーロに優しく話しかける。
「アーロ…。」ケイトの洗脳が解かれていることを確認したアーロは喜びのあまり、
「姉さん!」と飛びつく。それを受け止め、抱きしめるケイト。抱き合うアーロ姉弟。
「姉さん。呪縛解けたんだね…。」
アーロはケイトの顔を見上げながら言うと、ケイトは泣きながら、
「アーロ。私がラーニーに洗脳されて…、あなたを1人にさせてしまうようなことになるなんて…、本当にごめんなさい。」ケイトは大粒の涙を流し、3年ぶりに会った弟の身長が自分の目の高さまで伸びたことで月日の長さを感じ、弟の成長を実感して、さらに涙を流す。
アーロも一生懸命見上げていた姉の視線にかなり近づいたこと、またさらに力の解放が進んだ自分自身に誇りを感じていた。そして、
「僕はリディアの家でお世話になっていたよ。みんな良くしてくれた。みんなが僕を支えてくれたから…、今の僕がここにある。姉さんを取り戻すために、僕は強くなったよ。姉さん。」目をキラキラ輝かせながら話す弟がここまでたくましく、まだ小さいながらもしっかりとした少年になっていることに、驚き、そしてガージリフト一家に感謝の気持ちでいっぱいになった。
「本当に、こんな大きく、たくましくなって…。それで、今聞こえたんだけど…、あなたが神士教?なの?」と予期せぬことに困惑していると、アーロも、
「ちょっと前から言われてはいたけど…、覚醒したっていうのは、さっき、ラルスに言われてびっくりした…。」と話しを聞いていたラルスが、
「アーロ。君は自分で気づいてないんだね。」意外そうな顔をして言う。
「えっ?気付くも何も…、みんなの話の中で僕が神士教かも…、って話は出てたけど…、まさか僕がそんなわけないじゃないかと…、だって、僕まだ子供だし…。」と、もじもじしているのをラルスが微笑みながら、
「ははは。そうか…、でも君のポケットの中にその証拠が入っているから見てごらん。」と言うと、アーロはピンときて、
「あっ、石。」ポケットに手を入れて取り出す。それは以前よりも輝きを増しているように見える。ラルスは、
「そうだ。それこそが神仕教が持つ銀色の鉱石。聖なる力を持つ石で、これを持つ者は世界で2人しかいない。」
「世界で2人?その内の1人…僕が神士教…?」ラルスに説明を受けたとはいえ、11歳の男の子には受け入れるには時間を要する。
「アーロ。あなたが…、まさか…。」アーロを見つめて嬉しそうに泣き出すケイト。
先ほど爆風を巻き起こしたアーロの聖なる力により、怪我が完治したエルフリーデも皆の元に来て、アーロの様子を見て微笑む。




