玄人~この思いを…~
涙目の佑依が、
「何?お前が?その後、聞こえないんだけど…。」と玄人に問う。
「うるせえな…。」すると突然、佑依の片腕を自分の方に引き寄せた玄人が佑依の耳元で言う。
「嫉妬とか妬みとか…、黒い部分も全部ひっくるめて…、お前が好きだ。」佑依は時が止まったように動けない。玄人は引き寄せた佑依を強く抱きしめて、
「ずっと…、ずっと好きだった。昔っから、この先も…、ずっと、ずっと一生好きだ!」長年抱えてきた思いを佑依に伝える。
佑依はまだ動くことができない。あまりに突然の告白に、何が起きているのか理解できず、どうしていいか分からない佑依。玄人は突き放される覚悟で抱きしめたものの、佑依が抵抗してこない事に、嬉しさ反面、困らせているのでは…、という不安も生まれる。
すると、佑依が自分の胸の中でもぞもぞ動き始め、
「玄人…。」絞り出すように声を出す佑依。
「苦しい…離して、馬鹿人。」玄人は焦ってパッと佑依を離す。すると自分の胸に両手を当て、下を向く佑依が、
「ばか。」と呟く。それに即反応する玄人は、
「なんで馬鹿なんだよ。」囁くように言う。
「馬鹿だから。」そんな佑依をまた強く抱きしめる玄人。そしてまた、佑依にしか聞こえないような声で、
「なあ。もう戦いなんてやめて俺と一緒に帰ろう。早く落ち着いたところで佑依のことぎゅうって抱きしめたい。」と囁く。佑依は、
「やめてよ。気持ち悪い。ってか、今だってそうしてるじゃん。」と下を向きながら話すその顔には、笑みがこぼれていた。
先ほどまで曇天の空模様だった辺り一帯に、少しずつ光が差し込んでくる。その中を突然、稲光が走り、佑依の体を包み込み、倒れこむ佑依。
「佑依!」それを抱きかかえる玄人だが、その瞬間佑依の体が消える。
「佑依…。」玄人はしばらく呆然としていたが、状況を理解して、そのまま膝から崩れ落ちる。
ラーニーのもとに導かれた佑依。気を失っているせいか、ピクリとも動かない。その様子を見ながら、
「この事態…洗脳が足りないというのか…。」ラーニーが肩眉を上げ、不機嫌そうな面持ちで莉奈を睨み、
「莉奈、お前に全て任せたはずだな?」問う。莉奈は跪き謝罪する。
「申し訳ございません…、ラーニー様。」床を見つめ唇を噛む佑依の頭にラーニーが手を置き、
「二度はない…。私は復活の祈りに専念する。あとは任せた。」
「承知いたしました。」
ラーニーの言葉に静かに答える莉奈の唇から血が滴り落ちる。




