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佑依の思い~妬みの中で~

「お前ってさ、学校でもどこでも…、いつもみんなの前で明るく振舞ってんじゃん。でも実はそれって…、すっごく無理してるよな?それ見る度、何とか気持ち軽くしてやりてえなって思ってた。


 小学生の時はまだ感じなかったけど、中学入ってから、莉羽に対してのライバル心から、そのお前の苦しさ、めちゃめちゃ感じた。もともとお前プライド高かったけど…、まず成績で莉羽がどんどん上がっていって、お前は頑張ってもなかなか抜けなくて…。


 しかも…、お前の方が俺にとっては可愛いけど、人気は莉羽のがあって、体育祭とかいろんな行事で、莉羽は引っ張りだこだった。


 一番大きかったのは、陸上の短距離の件だな。絶対、選手になるって毎日部活終わってから、河原で一緒にどうしたら記録伸びるか頑張ってきたけど、どうやっても莉羽には勝てなかった。

この前の記録も、あいつは超高校レベルになっちまって。お前、相当落ち込んでるはずだし、内心莉羽が怪我でもしてくれればって思ってるはずなのに、おめでとうって。親友の莉羽の成績を喜びたい反面、妬ましくもある…。それを笑顔で声をかけるなんて…、ほんとはどんなに辛かったか…俺にはわかるよ。」心配そうな顔で佑依の顔を覗き込む玄人。その話があまりに核心をついており、いても経ってもいられなくなった佑依は、


「なにさっきから勝手にいろいろ言ってんのよ。私の気持なんかわかるわけないじゃない!」顔を真っ赤にして叫ぶ。


「分かるよ。分かるに決まってんだろ…。俺だってそうだから…。」玄人が苦虫を嚙み潰したような表情で呟く。その言葉に驚いた佑依は、


「えっ?今なんて言った?」そう言って聞き直す。


「だから…、俺もお前と一緒だって言う話だよ。」玄人が言い放つ。しばらく考えていた佑依は、全てを悟ったように、肩を落とす。


「なんで玄人のくせに私の気持ち分かってんのよ。凱なんて、もともとあんたとはいろいろと雲泥の差があるんだから、妬みなんて感じるのもおこがましいはずじゃん…。」佑依がボソッと言うと、玄人も肩を落として、


「しょうがねえじゃん。そう思っちまうのは…。どうにもなんないんだよ…。」力なく話す玄人の足元で佑依が座り込む。玄人も隣に座り込んで、


「お前、ここで全部吐き出せよ。俺がぜーんぶ、受け止めてやるから。」胡坐をかいて、両手を膝にのせて、下を向いていた玄人だったが、その言葉を発しながらゆっくりと佑依の方を見て、言い終えるまでにはその目をじっと見つめていた。佑依もその玄人の視線に気づいて、深く溜息をつくと、にこっと笑って、


「仕方ない。私の心の汚いところ全部聞かせてあげる。その代り、あんたの腹黒で、どす黒いところもちゃんと話すこと。約束だからね。」


 佑依は玄人に心の内を全て見透かされていたことで、罪悪感からの解放と玄人に共感してもらえた安心感と…、少し自分を許せたようなそんな気持ちになって、また涙が次から次へと溢れていく。玄人はそんな佑依の涙をそっと手で拭って、


「お前だけ悪者にするつもりなんかねえよ。俺とお前はおんなじだって言ってるだろ?安心しろ、俺は適当に見えても約束だけはちゃんと守る男だ!」笑いながら胸を張る玄人を横目で見ながら、


「知ってる。」と佑依が言うと、玄人は急に満面笑みになって、佑依の頭をくしゃくしゃしながら、


「そうだろ、そうだろ。」と言って、口を真一文字にして嬉しそうに空を見上げる。佑依はそんないつもの玄人に安心して心の内を話し始める。


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