心の内~お前の事だから分かるんだ~
「どうせ選ばれしものとか言われたんだろ?」
「…。」黙り込む佑依。玄人はそれを見て、フッと笑うと、
「図星か…?」からかうように佑依の顔を覗き込もうとする。心の内を見透かされた佑依は顔を魔㏍にして、
「うるさい…。」小声で呟く。佑依の様子から自分が言ったことに間違いが無いと確信した玄人は大声で笑いだす。
「ははは。俺と一緒じゃん!やっぱ、佑依もそうか…。そうか、そうか。」ニヤニヤしながら嬉しそうに鼻をこすって、
「俺も凱にさ、【お前は選ばれしものだ】って言われて…、何だか知らねえけど…。そりゃ最初は戸惑ったけど…、なんか、かっこいいじゃんって、じゃあ、いっちょやってやるかって決めたけど…。ははは~。お前もか。そうか、そうか。でも…、ってことはお前、ラーニーから全部聞いてないだろ?何が目的であいつらがこんなことしてるか。まあ、お前に話してもわからないだろって思われたんだろうな。」と言って、今度は声高々に笑い始める。
「笑ってんじゃないわよ。玄人のくせにむかつく。」そう言って佑依はすぐさま攻撃を始める。玄人はそれを生まれ持った運動神経とセンスで難なくかわす。
玄人が笑いながら、余裕で自分の攻撃をかわしていることも、佑依としては苛立ちポイントで、ここまでくると数打ちゃ当たる的な、何とも雑でお粗末な攻撃になっていた。
そんな佑依の心中は知る由もなく、
「笑えるに決まってるだろ。俺とお前はおんなじなんだから…。」そう言って攻撃をかわしながら徐々に佑依に近づく玄人。連続攻撃を難なくかわされていることに、増々苛立ちが隠せなくなっている佑依の顔に焦りの色が浮かび、
「さっきから同じって何がよ。」苦し紛れにそう叫ぶ事しか出来ない。
「いろいろとだよ。」そう言い終えると玄人は笑うのをやめて、真面目な目つきで、佑依の攻撃を全てかわして、佑依の目の前までくると、佑依の手首をつかんで攻撃をやめさせる。
「何よ、知ったような口ぶりで…。」佑依は玄人の顔を直視することができず、顔をそらす。玄人はそんな佑依の様子に声のトーンを落として、
「まあな、付き合い長いし…、お前がどうしてこっちに来ることになったのかもだいたい分かってるよ…。」その玄人の言葉に、
「いいよ…、そんなことどうでも…。」そう言う佑依の目に涙が込み上げているのが分かる。
「どうでもよくないよ。お前と俺のために…。ちゃんと話そう。」その言葉に佑依が、
「なんでそこに、あんたも入ってんのよ?」佑依は流れる涙もそのままに、玄人に食って掛かるように問う。玄人は佑依の手首をつかむ力を緩めて、
「まあ聞けよ。」そう言って一呼吸おいてから話し始める。




