戦闘開始~ロイと兄妹~
戦いを前にして和やかに話す私たちの様子が癪に障ったのか、支人達は自分にゆかりのあるこちらの使徒を挑発するかのように攻撃を開始する。
フィンとアラベル、エドヴァルドには、ロイとジルヴェスターが攻撃を仕掛け、神殿から出て屋外での戦闘が始まる。
「ロイ、久しぶりだな。」フィンはその攻撃に負けじと挑発するような口調で言う。
「相変わらずだな…フィン。」一方のロイは以前と変わらず落ち着いた口調で話す。
「ロイ兄…。」小さいころから可愛がってくれたロイが、敵として自分の目の前にいることに、涙が溢れ出てしまうアラベル。
「もうロイ兄って呼ぶのも馬鹿らしいな。つまんねえ奴の犬に成り下がって、情けねえ。今まであんたを信じてついてきた仲間たちをだまして…、さぞ気分も良かったろうな。」フィンが吐き捨てるように言う。
「初めから私に仲間などいない。私が信じるのはラーニー様だけだ。全てはラーニー様の目的の実現のため。お前たち愚民には、私たちのこの崇高な目的など、死んでもわからないだろう。」ロイは表情一つ変えず、冷静に話す。
「初めからか…。少なくとも俺とアラベルは、最後まであんたが裏切り者だとは信じたくなかったんだよ。俺たちがずっと背中を追ってきたロイって人は、そんなくだらない人間じゃなかった。俺たちだけは最後まであんたの正義を信じたかった…。」半分泣きそうになりながら、フィンは語る。
「時間の無駄だな。話していても私たちは交わることはない…。兄妹共々、消えろ。」そう言った瞬間、フィンの目の前に瞬時に移動してきたロイの姿があった。そして、フィンが気づいた時には胸元の防具が切られていた。
「何っ?」焦るフィン。その間にもロイの攻撃は続く。胸元に手を当て確認しているところに、今度は右肩から左わき腹に剣が走る。血が滴り落ちる。
「以前見た時よりも、早い…。」フィンは焦りを隠せない。
フィンは今、この時まで、自分がまさかロイと剣を交えるなど思ってもいなかった。
顔に飛んだ血しぶきを拭いながら、ロイとの出会いから、ロイの裏切りが発覚したあの日までを思い出すフィン。




