殺人事件~凱の両親~
「あなたがラーニー…よね?」私はメルゼブルクでの絶命の直前の記憶を思い出す。
「左様。お前が莉奈の妹だな?」ラーニーは足を組み、肘を膝に立てて、手を顎に当てながら、まるで品定めでもするかのように聞く。その様子に無性に腹が立った私は不機嫌に答える。
「ええ。」
「ふん。莉奈の妹とは思えんな。」ラーニーのその返答が自分の予想通りだったとさらに私の怒りが増す。美しさと可憐さを併せ持つ莉奈と、似ても似つかないと思っているんだろうなとの予想が的中して、この上ない怒りをぶつける。
「悪かったわね。お宅の莉奈と大違いで…。」と声を張り上げる。するとすかさず、
「おいおい、莉羽。そこ、気にしてる場合じゃない。」玄人が突っ込む。
私は我に返って、
「あはは。」と誤魔化し、表情を一変させ詰問する。
「私たち全員をここに呼んだってことは…、話し合いによる解決を考えているってこと?」私は念のため確認する。
「ふん。甘いな。…私の目的は何も変わらん。この星域をわが物にし、理想の世界を作る。ただ、その目的を邪魔する愚者どもの顔くらい見てやってもよかろうと思ってな。なあ、莉奈。」そう言って、莉奈の方を見る。
莉奈は隣でただ笑っている。するとそのラーニーの横顔に何かを思い出したのか、凱の持つオーラが怒りで満ちてくるのに気づく。
「凱、どうしたの?」
「あいつ…、あのラーニーって奴は…。」凱のただならぬ様子に、
「何?何なの?」無意識に顔を引きつらせながら私は問う。
「俺の父さんと…、母さんを…。俺の目の前で殺した…、あの男だ…。」
「…。」私は凱の言葉に絶句する。
口を抑え、にわかに信じられないというような表情でその男を見つめる凱。私はそんな凱の肩に手を置き、怒りが暴発しないように穏やかに問う。
「何があったの?」私の声に我に返った凱が、肩に乗せた私の手を握り、静かに話し始める。
「お前には言ってなかったけど、俺の両親は4年前に何者かに殺された。詳しいことは後で話すけど…。ただ…、あいつが俺の父さんと母さんを殺したことに間違いはない。」凱の目が再び怒りで満ちていく。
「絶対に…、許さない。」凱は私だけに聞こえるように話していた為、周りにはその情報は洩れなかった。
そして当のラーニーも、まさか4年前に眞守り人である凱と遭遇していたとは考えてもみなかっただろう。凱のオーラの変化に気付きつつもその原因は分かってはいなかった。




