破壊神~エデンにて~
私たちは莉亞の力により、シュバリエの採石場に飛ぶ。そこには、私たちの動きを予期していたのか、莉奈が待っていた。
「結構すんなり来たのね。戦う覚悟が出来てるってわけね?ふふふ。まあ、いいわ。行きましょうか。ラーニー様の御許に…。」そう言って莉奈が上空を見上げ手を上げると、採石場の天井を突き抜けるようにして、一本の光の柱が天空に向けて立ち昇る。それを見届けた莉奈が、
「さあ、あちらの光の柱の中にどうぞ。」と、不敵な笑みを浮かべながらその光の中へ誘う。
それを見た玄人が、
「莉奈さんのあんな悪魔みたいな顔、見たことない…。莉羽の姉ちゃんとは思えない程、いつも可愛らしい笑顔で手を振って…。ああ、天使の微笑みだ~って、癒されてたんだけどなぁ…。
くそっ。ラーニーって奴が莉奈さんを変えちまったのか…。」そう話す玄人に私は驚いて、
「えっ?玄人、そんな風に思ってたの?莉奈のこと…。って、数回しかあったことないのに、よく見てるね…。」私が違う意味で感心しながら言うと、凱が、
「こいつは、一緒に歩いてると、見てないふりして、しっかり女子の顔とかいろいろ見てるからな…。脳内の99%が女子で占めてるんだもんな?玄人。」凱が聞くと、悪びれもせず、にかっと笑って、
「いや。99.9%だ。」と言いのける。皆がドン引きする中、戦闘に加われない為アースフィアの自宅から心層に話しかける母が、
「そういうの、健全な男子高校生だなって、おばさん思うけど…、今は緊張感を持って行きましょう。」
苦笑いしながら諭す。
「はい。すみません…。」
そう言って恥ずかしそうに頭を掻く玄人の姿に苦笑いしながらも、指摘され、すぐさま謝る玄人はとても素直でいい子だな、と仲間たちは微笑む。
※※※
気を取り直して、私たちは莉奈が作り出した光の柱に足を踏み入れる。すると辺り一帯、閃光が走り、一瞬にして全員の姿が消える。
私たちは、古代ギリシャの神殿の、大広間のようにとてつもなく広い空間に飛ばされる。刺すような光に目を閉じていた私たちが、ようやく目を開けられるようになると、その先には、破壊神とその臣下たちが立っていた。
おそらくここがエデンなのだろうと予測できる。その中で睨み合う私たち。その中に馴染みの顔があることに私と凱と玄人が確認し、互いに顔を見合わせるが、目の前に君臨する「まさに悪の化身」といった風貌の持ち主から、どうしても目が離せなかった。
「ようこそ、わが神殿に。」
私たちを見下ろすように、玉座の主が声を発する。その声は聞く者の体全体を震わせるような、低く重苦しい声だった。細身で色白、肩の長さまで伸びた黒髪に、耳には髪の色と同じ真っ黒のループ状のピアスをしている。衣服も全身黒で、醸し出すオーラも漆黒の闇を思わせる重たい空気を漂わせている。




