捨て駒~ジルヴェスターの覚悟~
一方、大宙彗にて、破壊神を前に12支人が跪く。破壊神が、僕たちを見下ろすその目は、妖艶さと共に、見つめられたものを一瞬にして凍り付かせるような冷酷な色をたたえ、そのまなざしを誰一人として直視することが出来ずにいた。
「ここを戦場とする…、で良かったのだな?莉奈。」破壊神ラーニーが口元に手を置き尋ねる。
「はい、ラーニー様。わたくしはここを熟知してます故、万が一、支人達に何かあっても、わたくしの方ですぐにフォローに入ることが可能です。よろしいでしょうか?」莉奈が確認すると、玉座に座るラーニーは頷き、支人の顔をじっくり見渡し、ある男の位置でその動きを止める。
「ジルヴェスター、お前にはこの中で一番重要な役目を与えたはずだが…。支人の『石』はどうしたのだ?ここまで支人が集まり、その石の力をもって結晶を融解出来はしたが、全て揃わねば、私の本当の復活は成しえない…。分かっているはずだな?」と声を荒らげて言う。
「申し訳ございません、ラーニー様。あやつらの『石』を奪おうとした矢先、ナータンの主であるラルスと申す者が現れまして…。」ラーニーはジルヴェスターの言葉を遮って、
「言い訳はいらぬ。期待したが存外使い物にならなかった…。代わりならまだ大勢いる。お前など捨て駒の1人にすぎぬ…という事をよく覚えておくのだな。」吐き捨てるように言う。激高する君主に声を震わせながら、
「ラーニー様、わたくしめに今一度チャンスをお与えください。必ずやお力になって見せますゆえ…。」
ジルヴェスターは懇願する。その姿を一瞥して、
「勝手にしろ…。お前の今後如何では、即切り捨てる。」席を立ち、退室するラーニーの姿が見えなくなるまでジルヴェスターは頭を下げ続ける。
「はっ。」ジルヴェスターはうつむき唇を噛む。




