【第8夜② ~婚約者現る~】
婚約者の今回の来訪は、非公式ということもあり、王宮内でも比較的小さな部屋で準備が行われていた。部屋に入る、私とヴァランティーヌを待っていたのは、国王ルドヴィク13世、私のこの国における父である。
「お父様、おはようございます。」
「おお、わが美しき娘よ。今日はさらに美しい。エルフィー皇子も喜ばれようぞ。わはははは!」豪快に笑う父に、
「あら、お父様ったら…。」王女として生まれたからには、一度は言ってみたかったセリフを言って、テンションを上げる私。
「どんな方が来られるのか楽しみだわ。」と、ウキウキしていると、皇子一行が入ってくる。
その君は190センチはあるであろう長身で、すらりと細く長い手脚が印象的な人だった。流れるような金色の髪を後ろで束ね、すっと通った鼻筋は品の高さを表しているかのように美しく、目は切れ長のすっきり系、瞳はコバルトブルーで澄み切っている。皇子として生まれるべくこの世に生を受けたと、誰もが納得するほどのとんでもないイケメン皇子が来た!と、ヴァランティーヌと手を取り喜んでいると、その後ろに現れたのが見覚えのある…、なんと、凱だった。驚きのあまり、さっきまでのテンションが、嘘のようにダダ下がりするのを感じる。
「お目にかかれて光栄です。姫。この日を待ち望んでおりました。」声も優しく響く、何もかもこの世のものとは思えないほど美しく、品で溢れた素敵な皇子である。
「これは、これは、エルフィー皇子。お待ちしておりましたぞ。莉羽、ここへ。」父に促されるまま、私は前に出て、
「この度は、はるばるジークよりお越しいただきありがとうございます。私がファータ国王女、莉羽でございます。」と抜かりない挨拶をする。
「おお、なんと美しくなられて…。この度の婚約、誠にうれしく存じます。」そう言って、にこっと笑う顔も…、美しい。
「堅苦しい挨拶はなしじゃ。今日は2人で自由にすごしなさい。」国王はとても嬉しそうだ。
「ありがとうございます。では、姫。早速行きましょうか?」と、私の手を取りやさしくキスする。
こんな体験は初めてのことなので、ドキドキが止まらない。と、ふと後ろを見ると、凱があえて視線を合わせないようにしているのか、目をそらしているのが目に入ってしまう。
私の落ち着かない様子に気づいたようで、皇子は、
「凱。ここから先は2人きりにしておくれ。」と凱に促す。
ただでさえ、こんな国宝級のイケメンを前にして心臓が爆発しそうなのに、凱まで目の前にいて、いろんなどきどきが交錯して、心臓がはち切れそうだ。少女漫画の主人公のような気分になった私はこの後、この3角関係に、さらにとんでもないスパイスが加わるとは思いもしなかった。




