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渾身のプログラム~ラルスの本気~

 電話を切ると、ラルスの部屋に急ぐ凱。ノックしてすぐにドアを開けたので、何事かと驚いているラルスに、


「この前の話ですが…。その後状況はどんな感じですか?」凱は息を切らしながらも丁寧に聞く。すると、ラルスは先日までとは全く違った明るい表情で答える。


「ああ、まずこっちの方は終わってるよ。これなら間違いなく上手く動く。あとは…、動かすタイミングをどう判断するかだよ。その人は信用できるのかな?


 あっ、あと、もう1つの件は、着々と進んでいるようだ。各星の魔物と魔獣の数が減少して、それらが全てナータンに集められている。それと…、今までアースフィアで確認されていなかった魔物たちが、地割れ付近から発見されていることから…、その線で間違いないと思う。」


 ラルスは、凱から頼まれていた自分の渾身のプログラムを動かす人物が気になっているようだ。凱は依頼したプログラムがまさかそこまで終わっているとは思わず、


「えっ?もう終わってるんですか?っていうか、受けてくれたんですね?それにしても…、かなり複雑で高度なものだし、あと数日はかかると思ってました。さすがナータン1の頭脳!」凱は珍しく驚嘆の声をあげる。そして、その書類とパソコンの内容をざっと見て、


「すごいです!凄腕です!あなたに依頼して間違いなかった!」凱は子供のようにはしゃいでいる。


 凱のその様子を見て、ナータン1の美と頭脳を持ち合わせたラルスは、隣で微笑むエルフリーデに笑いかけた後、


「そう、それならよかった。僕の自慢のプログラムだもの、信頼できる人に動かしてもらいたい。」と自信にあふれた表情で凱に念を押す。


「大丈夫ですよ。凄腕の信頼できる人がこのアースフィアにもいます。必ずこのプログラムを成功させるんで、あとはこれを使って調査してみてください。俺なりに調べたものがこの中に入ってます。」と言って何かを渡したが、それが何なのか私には見えなかった。


「それと、さっきの魔物の件ですが、おそらく間違いないですね。アースフィアに大量の魔物や魔獣を送りこもうとしている。」さっきラルスが言っていた、今までアースフィアでは存在しなかった魔物や魔獣が発見され始めていること自体知らなかった私だが、まさかそれが送り込まれようとしているとは思いもせず、背筋が凍るような感覚になる。


するとちょうどラルスの部屋の前を通りかかり、凱とラルスのやり取りを見ていた玄人が、


「俺、思うんだけどさぁ…。」と部屋に入ってきて、少し不満げに話し始める。


「何?玄人。」」私は尋ねる。


「まあ、あんたにもいろいろ事情があったのは…、俺たちも聞いて理解してるつもりだけど…。」玄人が少しためらっている様子に凱が、


「何?」と急かす。すると玄人は、


「最初に会ったときの印象が悪すぎて…。せっかくあんたはこうやって、プログラム作ったりしてくれてるのに、なんかしっくりこないっていうか…。なんていうか…。」まだはっきりしない玄人の物言いに、私はいい加減しびれを切らして、


「だから何が言いたいの?玄人。」強めに言うと、


「結局、あんたはこっち側の人ってことで…、信用していいんだよな?」最後はラルスの目を見て、力強く聞く玄人。


 私と凱は納得する。確かに初めて家に来た時の、あの【クラウディスばり】の軽さ、【空気読めない系】の雰囲気は、見た目の美しさもあって、とてつもなく鼻につく感じだった。その後、仲間と共に行動したのは数える程度。ラルスから完全にクラウディスが離れて、過去の罪を償うためにと決意したあの日から、ほぼ自室でプログラミングに集中していたラルスの本当の人となりを、仲間たちが知ることは難しく、小さいながらも不安材料として残っていた。


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