感謝の思いを…~神遣士として~
「ふふふ。」私が無意識に笑ったのを、莉亞が不思議に思ったようで、
「どうした?莉羽?」と、尋ねる。私は莉亞に微笑んでから、みんなに向けてここ最近思っていたことを話し始める。
「私ね…、みんながこうやって同じものを見て喜んだり、笑ったり…。それぞれ別の星から来て集まったけど、今みんなが同じ思いで1つになれてるんだって思ってたら…、なんだか嬉しくて…。みんなにありがとうって伝えたくて…。」私がそう言うと、
「ははは、そんな言葉はいらないよ、莉羽。俺たちは俺たちがそうしたいからしてるだけであって…。逆に気恥ずかしいからやめてくれ。」フィンが照れ笑いしながら言う。
「ううん、言わせてほしいの。皆が集まっているこんなときじゃないと伝えられないから…。
まがいなりにも…神遣士だっていうのに…、今までに一度も神様の声が聞こえないなんて…、そんなダメな私を信じてくれてありがとう。ついてきてくれてありがとう。本当に…。」
今まで文句ひとつ言わず、私を信じついてきてくれたこと、また、みんなの何気ないやり取りに幸せを感じてそう言うと、
「ほんとに止めろよ…。そんなかしこまった感じがいつもの莉羽らしくなくて…、気持ち悪いぜ。」そう言いながら、目が少しうるんだ玄人が茶化しながら言う。凱はそんな玄人の肩に肘を乗せて、嬉しそうな顔をしている。玄人も鼻の下をこすりながら笑っている。
私は久々に見た2人の絡みに懐かしさを感じ、そして自分の思いに間違いがないことを確認すると、再びみんなに向けて話し始める。
「まあ、百歩譲って気持ち悪いことにするとして…(笑)。みんなに伝えておきたいことがあって…、
近いうちに本格的な戦いが始まると思うの。だから、みんなにはそれが始まる前に、私の思いを…、聞いてほしい。」私がそう言うと、仲間たちが真剣な表情で一斉に私の方を見て、うんと頷く。私はゆっくり話し始める。
「これからの戦いは、これまで以上に死を覚悟せざるを得ない壮絶なものになると思う。敵の全体像が見えないから、どんな敵がいて、どんな力を持っているかも分からない。私たちの力も全て解放しきれているわけではないから、どう戦えるのかも不安だと思う。
そして、彼らが最終的に何を果たしたいのか…、支配なのか、5星の滅亡なのか…。ラルスが言ったように新しい世界の構築?なのか…、何も分からないけれど、その中でもはっきりしていることはただ1つ。私たちは世界を破壊神の手から守ること。それだけはブレることはない。
それにね、私たちにはそれを実現できる仲間がいる。心から信頼できる仲間が…。くじけそうになった時、負けそうになった時、振り向けばみんながいて、私がいる。だから、この先もみんなの力を私に貸してほしいの。私は負けない、必ず勝つから…、お願い!」そう言って深々と頭を下げる。
私のその様子を腕を組んで偉そうに見ていたフィンだったが、私が頭を下げるその姿に、
「莉羽、頭をあげなよ。ここにいるみんなはどんな形であれ、莉羽に救われた仲間だよ。だから、頭なんか下げる必要ない。」そう言って泣きそうになりながら、私の肩に手を置く。
「そうだよ、莉羽。みんなあなたに出会えて…、本来いるべき場所を見つけてもらったんだよ。だから頭をあげて!」アラベルが言う。
「みんな、莉羽の明るさに元気をもらってるんだよ。」リディア。
「そう、あなたの優しさにも。」リーゼキャロル。
「何があっても諦めない心にも。」コンラード。
「折れない心にも。」マグヌス。
「素直さにも。」エドヴァルド。
「慈悲深い心にも。」母、莉月。
「人を信頼する心にも。」父、響夜。ここまで聞いていて、私はあふれる涙を止めることができない。すると、
「馬鹿さにも!」玄人とアーロが機を狙って言う。私は2人の頭を軽くこずいて、
「みんな、ありがとう。みんな、大好き。」と言って涙を拭い、
「みんな、これからもよろしくね!」と言うと、みんなが声をそろえて、
「はい!」
「おう!」
「うん!」と笑顔で答える。
凱はそんな私の頭をポンポンとして微笑み、私は涙でいっぱいの最高の笑顔を凱に向ける。




