本来の姿~良心の呵責~
エルフリーデはクラウディスと直接会ったことがないので、私たちの会話の内容をあまり把握できていないところもあったようだが、彼女の次の言葉に私も凱も大爆笑しないわけにはいかなかった。
「あんなに…、デリカシーのない、気味が悪い人がいるんですね?あちら側には…。闇の中から感じたとはいえ、あまりに残念なオーラだったので、そんな人が本当に存在するのか…?と思っていたのですが…。」
エルフリーデはその事実に本気で驚いているようだった。私と凱はその様子にまた笑ってしまう。そして、
「【足元が見えずに仲間同士で仲良しこよし】は、ジルヴェスターが内通者とは知らずに仲間だと思って仲良くやってるって事を言っていたんだなと思うけど、まさか【僕に気付いてない】は、ラルスに憑依して、ラルスを支配し、操ろうとしていた事を言っていたなんて…。」私が言い終えると、
「含みを持たせて言ったのでしょうが、それもまた浅いですね。しかも灰汁が強すぎて、すぐに誰が憑いているかばれてしまうなんて…、何ともお粗末な方ですね。」エルフリーデは残念そうに言う。
私は彼女のその言葉にまた吹き出しそうになるが、気を取り直して自分とエルフリーデの話をまとめる。
「ラルスがナータンで予定より少し早く目覚めたのは、きっと何らかの方法でラルスの存在とその正体を知ったクラウディスの仕業でしょう。クラウディスは、自分の念をラルスに憑依させ、予めこちらに送り込んで石を奪う計画だったのではないかと思います。」
「そういう事ですか…。ラルスのその…、クラウディスとかいう軽薄な男性からの呪縛は解きました。だから今は、彼本来の姿です。でも彼は…、その男からの呪縛から解放され自分自身を取り戻したことで記憶も全て取り戻し、過去に自分が犯した重大な罪の重さに心が押しつぶされそうになっています。私はそれを解放してあげたい。そう考えています。」エルフリーデはさっきまでの表情を一変させ、目に涙を浮かべながら話す。
※※※
エルフリーデはその後、ラルスから聞いた彼の過去を私たちに伝える。彼女が全てを話し終えるころには、その涙も枯れ果てていた。
私と凱はナータンでのラルスの過去を知り、私たちは彼のその良心の呵責から解放できる術を考える事に専念し、彼女には引き続きラルスの傍にいてほしいと伝える。
それから時を待たずして、凱はラルスを呼び出す。




