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別人のオーラ~エルフリーデの思い~

 全てを話し終えたラルスは力なく、うなだれていた。


 ラルスの過去を知ったエルフリーデは、いつの間にか自分の頬にも涙が伝っているのに気づく。罪の重さに押しつぶされそうになっているラルスの心中を思うと、自分自身の心も潰されそうなほどに重くなっている。一度深呼吸をして、ぎゅっとラルスを抱きしめるエルフリーデ。


ラルスはエルフリーデの右肩におでこを預け、

「まさか、ナータンを死の星にした兵器を…私のこの手が作り上げていたなんて…。」泣き崩れるラルス。エルフリーデは無言で再び彼の背中に手を当て、


「よく話してくれましたね、ラルス。」エルフリーデは彼の口から出た衝撃の事実に、彼の心境を思うとそれ以上言葉を発することが出来なかった。彼女はその時、ただラルスのそばから離れることなく、ずっと彼を見守っていた。


※※※


 その日を境にラルスは人が変わったように、落ち着き、品性にあふれた紳士的な態度で皆に接した。エルフリーデに全てを話したことにより、心が少しだけ救われたような気がしていたラルスは、皆の為に、少しでも自分のできる事をしたいとエルフリーデにだけ打ち明けていた。エルフリーデはその変化に喜び、彼の心が罪の重さから少しでも軽くなれるように献身的に支えていた。仲間たちはその豹変ぶりに驚くが、後にラルスの身に何が起きていたかを聞き、納得する。


 エルフリーデから話をしたいと言われたのは、ラルスが来てから2週間後の事だった。その間、私と凱はラルスについて調べていたが、凱は優秀な頭脳を使って、私には理解できない方法でナータンに残された情報を引き出したりしていたようだった。しかし核心的な部分が不透明だと凱から聞かされていたその時、エルフリーデが私たちの部屋を訪れた。

 

「2人とも、少しお時間いただけるかしら?」そう問いかけるエルフリーデに私たちは笑顔で応える。


「もちろん。」


※※※


「最初に彼が皆の前で公言していたように、彼は自らを最強と言い切るだけの能力を確実に保持していて、彼の所在如何で、つまりこちらにつくか…あちらにつくか…で、私たちの戦いが左右されるという危機感を感じました。今ここでこちら側についてもらわないと…と思い、彼と距離を縮めようと思いました。でもそれ以外に…。」そこまで言うとエルフリーデの表情が曇る。彼女のその様子から今から話される内容の重さを感じ、私は彼女が話しやすいようにと、癒し効果のある紅茶を淹れ、そっと彼女の前に置く。それと同時に凱が、


「確かにそうですね…。ファータ王を一撃で…、という話はおそらく本当でしょうし、彼の持つオーラは別格です。エルフィー皇子だけでなく、彼が向こう側についてしまったら、俺たちにとっては苦しい戦いは避けられない。でも…、あなたがそこまで考えてくださっているとは…。」気遣うように言葉をかけると、彼女はうつむいていた顔を上げ、涙を堪えながら再び話し始める。


「お気遣いありがとうございます。」そう言って涙目でにこっと笑い、


「それ以外に…、ラルスが初めてここに来た時、彼のオーラと言動に不自然さを感じました。私は彼という人物を知りませんが…、なぜかその時、その違和感の原因が何なのか、解明しないといけないような…、そういう気持ちに駆られたのです。彼の言動を注視しなければ…ただその思いでなるべく彼の近くにいようとその時は思っていました。


 しかしその後、彼の体調が急変してから最初とはまた別人のオーラを纏い始めたので、これは彼に何かがあると確信して…、もっと近くで彼の背後にあるものを感じ取らなければと、極力彼の傍に居る事を心掛けました。そこで…、彼が自分の記憶を取り戻していく事が彼の体調をより悪化させていることが分かったのです。」ここまで言うとエルフリーデは一度呼吸を整えて、続ける。






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