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裏切りと絶望~破滅への一歩を…~

 しかしある日、ラルスは上官からある計画の責任者にと打診される。その資料を手に取ったラルスは驚愕する。それは自分しか知りえない、一字一句違わぬ自分の計画書類そのものだった。

 はじめ、自分の目を疑ったラルスだったが、自宅のパソコンを確認したところ、何者かによってそのパソコンから盗み出されていたことが分かる。機械音痴な妻、まだ幼きわが子は疑う余地はなかった。では誰が?


 自宅に侵入し、自分のパソコンの厳重なロックも解除して、人類を脅かすほどの計画書を盗み出したものが存在すること、また人類を滅亡の危機に陥れる死の兵器が現実のものとなってしまうかもしれない事態に、不安と自責の念とで頭がおかしくなりそうだった。

 と同時に、誰が我が家に入り込み、自分のパソコンに侵入したのか…、自分しか知りえない計画を誰が知りえたのか…、近しい人を全て疑う事で人間不信に陥り、誰もが自分を陥れようとしているのではないか?…という強迫観念で自殺をも考えるようになった。


 しかし、その時自分には愛すべき家族がいることを思い出す。守るべき妻とまだ幼い子供。自分が死んだら、この2人はどうなる?2人の末路を想像し、自分の馬鹿な考えを捨て去る。上官への返事を翌日に控えたその夜、2人の笑顔を見て決断する。自分が作り上げた抑止力という名の最強化学兵器のほぼ完璧な計画に、自分は加わることは出来ないと…。家族の未来を思い、自分はその打診を断り、そして何らかの方法でそれを阻止する事を決断する。


 翌朝、ラルスは朝一でその打診を断る。しかしその日、なぜか分からないが気持ちがざわつき、半休を取って家路を急いだ。早く、妻を、わが子を抱きしめたい気持ち一心で…。

 玄関を開け、リビングに入ると1人、おもちゃで遊ぶ子供の姿があった。その様子に違和感を覚えたラルスは妻を探す。あとは寝室のみ。そのまま寝室に向かい、ドアを開ける。


 そこには、ベッドの上で抱き合っている妻と職場の同僚がいた。時が止まる。無言でドアを閉め、それ以降、家に戻ることはなかった。いや、戻ることが出来なかった。

 子供だけは何とか自分が育てていきたいと、何度か家の前まで行っては見たものの、妻と顔を合わせることに強いストレスを感じ、その思いを叶えることはできなかった。


 その後分かったことだが、その同僚と妻は幼馴染でだいぶ前から関係を持ち、何度も家を出入りしていたらしい。そして、出入りしている中でその同僚が計画書を持ち出していたと…。


 最愛の妻の衝撃の裏切りを知り、やけになった自分は、自分が元々計画した、その曰くつきの化学兵器製造の責任者になった。上司はえらく上機嫌になり、報酬も何倍も与えるとそれはそれは饒舌に語った。おそらく自分は私のさらに何倍もの報酬を約束されたのだろう。反吐が出た。世の中、クソだらけだと…。

 製造は計画通り順調に進み、あと数日で完成を迎えるにまでになった。それと同時に国の首脳陣から製造依頼を受けていた、自分が開発中の「最強化学兵器対策の装置」も完成させていた。


 それは有事の際、国家のお偉方、その親戚がその中に入って、半永久的に生存できるカプセル型装置だ。


 その設計を依頼されたとき、嘔吐が止まらなかった。自分たち、そして自分の家族だけ生き残ろうとする閣僚たちの我利の追及をまざまざと感じ、それに加担している自分が許せなかった。

 だが、便器と向かい合いながら、私はある考えにたどり着いた。生まれてから今に至るまで、両親にも偽の愛情を注がれ、愛し合っていると思っていた女は自分の学歴や肩書だけを愛し、自分の能力を妬んだ同僚に大切な人を奪われる。裏切られた自分にはもう何もなかった。自暴自棄になった末、万が一の際、自分の装置以外はすべて機能しないようにセットした。


そして、その万が一が起こった。ナータンが滅亡の日を迎えたのだ。


そして今に至る。


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