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少年の秘密①~母の不可解な行動~

「たっ、だいま~。玄人様とその師匠、ハルト様のお帰りだ~。」玄人が玄関のドアを開ける。


「お前、なんか…、浅いな…。」ハルトムートは師匠と呼ばれることを今更ながら恥じ、玄人に厳しい視線を送る。そんな自分を睨みつけるハルトムートの真意が分からない玄人は「なぜ?」と悲しい目で返す。それを出迎えた母が苦笑いしながら、


「2人とも、おかえりなさい。君も、ようこそわが家へ。」少年に声をかける。


 少年の大体の事情は2人から家に着く前に知らされていたが、まさかこんなやせ細った、生気の全く感じられない少年だとは思わなかった私は、


「いらっしゃい。」と声をかけた時、顔が少し引きつっていたかもしれない。


「この子がさっきあの家にいた子だ。蒼い石を持っている。ただ…母親は俺たちが着く直前に連れていかれたようだ。」するとハルトは、少年に聞こえないような小声で続ける。


「さっきこの子に聞いたんだが…、母親の行動が不可解だ。」ハルトムートは私にそう告げる。私は、疑問の表情を投げかけるが、ハルトは、


「後で。」と言って、少年を部屋の奥まで連れて行き、仲間と同じテーブルに座らせる。するとさっきまでしょげていた玄人が元気を取り戻して少年に、


「なあ、ところで…少年!名前聞いてなかったけど名前を教えてくれ。俺は櫟 玄人。よろしく。」と笑顔で言い、手を差し出すと、


「双黒寺 朔。」少年はぼそっと話す。


「朔君ね!私は宮國莉羽、よろしくね!」私はにこっと笑って続ける。


「今日はいろいろあって…、どうしていいかわからないよね。ここにいる人が誰なのかも、なぜ自分がここに連れて来られたかもわからないと思うけど…とりあえず、ゆっくり休んで。」私はそう言って、朔の冷え切った手を握りしめ、優しくほほ笑む。朔がうんと頷くと、仲間たちも我先に自己紹介をしようとするが、朔はそれ以降、下を向いたまま誰とも視線を合わせず目を瞑ってしまい、仲間たちはそれを断念する。


そんな朔に私も無理強いはしたくなかったので、


「部屋に行こう。私が連れていくね。おいで、朔。」そう言って、みんなに目配せしてから朔を部屋に連れて行く。


「今日は気持ちも疲れてるだろうから、ゆっくり寝ようね。ここに来たからには、もう大丈夫…。私たちがあなたを守るから、何も心配しないで。ここにいるみんなはあなたの家族と思って、安心して過ごして。」私の言葉に瞬き一つせず聞いている朔の頭を優しく撫で、再び微笑むと、今度は私の笑顔に少し赤くなる朔。すると突然、


「ここで希望は見つかった?」突然、突拍子もないことを聞いてくる朔に驚いた私は一瞬絶句してしまうが、


「ここは希望しかないよ。安心して。眠るまでここにいるね。」そう伝える。朔はじっと私を見つめてからそのまま目を閉じる。私は彼の言葉の意味が全く分からなかったが、ひとまず朔が目を閉じたことで、なぜかほっとする。そして彼の素性を探る為、彼の心層に入る。

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