蒼い石と共に~少年が抱えるもの~
その後、新たな仲間の玄人が加わり、ログの力をもとにした捜索が続く。
すると、アースフィアのとある家から2つの反応を得る。
「ハルトムート、玄人、お願いね。」私は凱の提案通り、玄人とハルトに石の反応があった家の捜索をお願いする。玄人はお調子者だが、実は物静かな男に憧れていることを知っていた凱が、それを利用してある提案をしてきたのだ。玄人の憧れ対象として、ハルトはもってこいの存在で、
『冷静沈着なハルトムートなら、玄人もうまく扱えるだろうし、玄人の理想に最も近い存在のハルトのいう事なら奴も聞くに違いない』そう笑って言った凱の見立て通りになった。玄人はその家に着く前には、ハルトムートを師匠と呼んでいた。どうやらハルトの過去と、拉致され敵に洗脳されている姉に対するハルトの思いを聞き、ハルトの男気を感じたようで、玄人が号泣しながら、自分の事を人生の師匠と呼び始めたと、この後ハルトから報告を受けることになる。
2人が反応のあった家の前に立つ。
「何か嫌な気配がする。」ハルトムートは周りを確かめながら家の中に入っていく。何かに気づき、振り向いて玄人に伝えるハルト。
「ん?気配が消えたぞ…。」すると奥の方から音が聞こえ、2人はその部屋に向かう。
そこにいたのは1人の少年。おそらく14,5歳ほど。その子はガタガタと震えていた。
「おい、どうした?」玄人が話しかけるがなかなか震えが止まらず、ハルトムートが背中を撫でて落ち着かせる。
「母が…、苦しむ声がきこえて…そうしたら変な生き物が…母を連れさりました。」
「君はその生き物に、姿を見られたかい?」ハルトムートが聞く。
「いえ…多分…見られてないと思います。僕はそこの納戸で探し物をしていたんですが、母がこの部屋で苦しむ声が聞えたので、何が起きてるのかそこから出ようと思ったら、変な音がしたので隙間から母の様子を見ていて…。そしたら見たことない生き物が母を…。」ここまで言うと、またガタガタ震えだす少年。玄人は、
「俺たちが助けに来たから安心しろ、もう大丈夫だ。ほら、手、震えてんぞ。手握ってやるからこっち出せ。」と言って少年の手を握る。そして、その手を引き抱きしめる。
「心配すんな。お前の母ちゃんも俺たちが助けてやるから。」
その様子を見ていたハルトムートが、
「お前、ただの馬鹿かと思ったけど…いい奴だな。」それを聞いて、心外だという顔をして、
「当り前ですよ、師匠。俺の99.9%は優しさで出来ているんで。」どや顔で話す玄人。
「脳は30点くらいだが、心根は満点だ。気に入った、玄人。」
「あざっす!師匠!」
「ははは。とりあえず、ここにいるのは危ないな。でも目的の石が見つかってない。それを探してすぐに出るぞ。」立ち上がらせようとしたとき、背中に手を当てる少年。
「おい、どうした?」玄人が声をかける。
「背中見せてみろ。」ハルトムートが洋服を肩まで上げると、背中だけでなく、体のあちこちに痣がある。
「おまえ…。」
「誰にやられた?母親か?」焦ったように首を振る少年。
「父親か?」今度は死んだような目で反応しない。
「悪かった、見せたくなかったよな…。でも痛かったら、俺が負ぶっていくから遠慮すんなよ。」玄人が笑顔で言う。少年はうんと頷いて再び玄人と手をつなぐ。
「そうそう、お前、家の中にこれくらいの大きさのきれいな石とか無い?」玄人が卵くらいの大きさを手で表し聞くと、少年は体を抑えながら2階に上がり、小さな箱を持ってくる。
「その箱は?」ハルトが聞くと少年は無言でその箱を開ける。するとその中には蒼く光る石が入っていた。
「これ、お前のか?」
「僕のではないですが…。昨日見つけました。」
「やったじゃん!すげーな、少年!さっ、帰ろ、帰ろ。」玄人がはしゃぐ。
「おいおい、もう1つあるはずだろ。探すぞ。」ハルトムートが言う。すると、莉亞の声が心層に響く。
「石の反応が1つしかないけど、何かあったの?」
「そうか…、持って行かれたか…。それなら、ここにはもうこの石しかないな…。分かった、今から戻る。詳しい話は帰ってからだ。」そう言って、少年を見ると不安そうな顔をしてこっちを見ている事に気付き、
「このままここにいても…、きっとお前は父親の餌食だ。俺たちといくか?」少年に聞く。
「…はい。」
「よし、じゃあ決まった。行くぞ!」そう言って少年を負ぶった玄人と共に、ハルト師匠は家へと向かう。




