【5星王~前シュバリエ王の覚醒~】
エルフィー皇子の妹の第1王女として生まれ、本来であれば、王宮の中で大切に育てられるはずだったエルフリーデ。しかしながら、想像を絶する生活を余儀なくされ、心も体も傷つけられてきた。それを思うと涙が溢れそうになる私。
「莉羽様。私の為に流す涙は不要です。私は今、ここであなた様に会えたことで、最高の幸せを感じております。そこにいらっしゃる5星王と共に、私も自分の宿命を果たしたいと思っております。」
エルフリーデの視線の先にいるのは、突然の事にきょとんとしているフィンであった。
「えっ?俺?」フィンは自分を指さし、今にも目玉が飛び出しそうに驚いている。
「ええ、あなたです。ファータでの戦いで確信しました。あなたが持つ石を見せてください。」
フィンはそう言われ、自分の剣にはめ込んだ緑色の石をエルフリーデに渡す。すると、その力に反応したのか、フィンの石が光り始める。
「間違いありませんね。この石は5星王が持つ石『翠王石』です。ほら、私の石と共鳴しています。」
その様子にまわりの仲間たちは見入っていて誰も声を出すことも出来ないでいた。そして一番驚き、身動き1つできない者がここにいる。そう、5星王の1人と断言されたフィン、その人である。
「フィン?お~い、フィン?」私はフィンの目の前で手を動かし、見えているかどうか確かめるが、何の反応もない。そこに後ろからアラベルが大きな足音を立て、突然フィンの背中を思いっきり叩く。
「ちょっと、兄さん!しっかりしなさいよ。さっきまで、自分が王の1人かもって浮かれてたのはどこの誰かしら!ねえ、王なら王らしく、しっかりして!」そう言って、喜びの表情でもう一度背中を叩く。すると、ようやく我に返ったフィンが、
「いったいなぁ…。その馬鹿力どうにかしないと彼氏もできないぞ、アラベル。」そう言って背中をさすっているフィン。そして、
「エルフリーデさん、さっきの話は本当でしょうか?」一瞬で表情をかえ、真剣な眼差しでエルフリーデに尋ねる。
「フィン様、間違いありません。でも…、突然言われても、信じられませんよね?でしたら、私の手に触れてみて下さい。」そう言って、手を差し出す。そのエルフリーデの手の上に自分の手を重ねるフィン。
その瞬間、さっきの私たち同様、力が抜けたかのようによろけてしまう。
「おい、大丈夫か?フィン。」先を予想していたのか、ハルトはフィンの後ろに立ち、よろけたフィンを支える。
「あっ、ありがとう。ハルト。」フィンは頭を押さえながら、ゆっくり顔を上げるとエルフリーデを見て、
「思い出しましたよ、回生以前の記憶を…。確かに俺は5星王の1人、シュバリエ王だった。遠い過去の記憶なのに…、鮮明に覚えている…。」
フィンの様子に、仲間たちは驚き、言葉を発することが出来ない。




