【ファータ王vsシュバリエ騎士団長フィン】
フィンの攻撃により、王の体は鮮血にまみれ、誰だか見分けがつかないほどの状態になっていた。頭部から流れる血を拭いながらファータ王が聞く。
「お前は、何者だ?」ゆっくりと立ち上がり、フィンを睨むその目は闘志に満ちている。
「お前になんか名乗ってやるか…。反吐が出る。ところで…お前、王妃を殺してう奪った『石』、持ってるよな?俺に渡せ。」そう言って、緑の石がはめ込まれた剣を構える。
王妃を殺したという驚愕の事実を聞いて、恐れおののくコンラードの妻と娘は少しずつ後ずさりする。
「ん?お前、その石は…。」王がフィンの剣の石を確認し、言いかけた途端、フィンは攻撃を仕掛ける。続けざまに剣を振り下ろすフィンの勢いに、王はついていくことができず、体のあちこちから血が噴き出る。
「ぐふっ。」口から血を吐きながら王は、何かしらぶつぶつ話している。
『術かっ?』
それが王の攻撃の始まりだとにらんだフィンは、防御態勢に入るが実際王がどのような術を使うか分からない。その為、必要以上に神経を尖らせなければならなかった。王の声が少しずつ大きくなっていく。そして、
「突刺術『剣山刀樹』」と叫んだ瞬間、地面、壁、天井ありとあらゆる所から長さ5mほどの鋼鉄の針が突き出し、地面から突き出したものに足を、天井から突き出されたものが左肩にと、フィンの体の至る所に突き刺さる。
「うっ。」大量の出血とともに痛みが体中を走る。顔をあげ、王の居場所を探すが見当たらない。ふと目を肖像画の方に向けると…。そこには床から突き出した何本もの針に突き刺された兵団長の妻と娘の姿があった。
「大丈夫か!」フィンは声を張り上げ2人に確認するが、何とか息をしているような状態の母子は答えることができない。
「なんということを…。」フィンは怒りで気が狂いそうになる。
「無力の者まで手をあげるとは…。何が争いのない幸福な世界を作る…、だ。ふざけるのもいい加減にしろ。お前は単なる偽善者だ。自分の言葉と理想に酔いしれているだけのただの殺人者だ。お前のような奴にこの星の幸せを語る資格なんてない。消え失せろ!」叫びとともに再び大量の血が噴き出るのもそのままに、フィンは剣を構え、目を閉じ、心を無にする。
何一つ雑念のない無の世界。
すると、体から徐々に熱気が放出され、目を開けたフィンの瞳は緑色に光っている。
それを見た王は、また再びぶつぶつと口を動かし始め、術の導入に入る。しかし、フィンの放つオーラに、王は危機を感じ、攻撃目標をシフトする。




