【謎の青年~ログの正体~】
「そのログ?が現れた途端、ポケットから小さな振動を感じたんだ…もしかしてと思って見たら…。」
ハルトの話を聞いて、皆が落ち着かない様子で何かを確認している。
「私のも光ってる。」リディアが掌に乗せた青い石を見せる。
「私も…。」続いてファータから一時帰還したコンラードが、
「私もです。」と、エドヴァルド。
「…。」弟のジルヴェスターは透明の水晶のように光る石を見せる。
「僕はこれ!」アーロは銀色に光る鉱石を取り出す。
「すごいな!こんなにも…。それに、莉羽と莉亞は赤。フィンは緑。アーロはシルバー。」
「どの石がそういう役割かは分からないけれど、きっとみんなに何か力を持ってるのね!」母が嬉しそうに話す。すると、少し遅れて、
「お兄ちゃん、私のも…。」フィンが振り向くと妹のアラベルが青の石を掌に乗せている。
「えっ?お前も?こんなのいつから?」
「お父さんとお母さんが殺されたあの日…。」
「そんな前から?」
「うん。黙っててごめんなさい。でも、ただの石としか思ってなかったから…。」
「それはそうだ…。ここにいるみんな、自分の石はただの石としか思ってなかった。でも…、お前も持ってたのか~。」フィンは満面笑みで話しているが、アラベルは思いつめたような顔をしている。
「そんな不安そうな顔するな!何かあったら兄ちゃんが助けてやるからな!」とアラベルの肩を抱く。
すると突然ログが、テーブルに置かれた石に近寄り、その石を見つめると石の光が強さを増し、ログの目も光り始める。
「ログ?」
「どうしたの?ログ。」アーロがログを抱き上げようとすると、ログの体がふわっと宙に浮き、目の前から消える。
「ログ?」
「ログ~。」父と母の強力な結界内にいるはずなのに、ログが目の前から消えたことで皆に恐怖が走る。
「ログ。どこに行っちゃたんだよ。」アーロとリディアはログを可愛がっていただけにべそをかいている。すると部屋の奥から、
「ここだよ。」という声が聞える。皆が驚いて振り返ると、長身、細身で色白の20歳そこそこの若い男が座っている。
「あなた…、誰?」私は恐る恐る声をかける。
「驚くのも無理ないよね~。僕は、さっきアーロからご紹介にあずかった…、ログだよ。」そう言いニコッと笑う。
「いやいや、ログは可愛いワンちゃんみたいだったし…、あり得ないんだけど…。」フィンが疑いの目でその男を見る。
その男の姿は、身長が2mほど、薄いピンクの髪はかなり高い位置でポニーテールのようにまとめられ、長いまつ毛の奥の瞳は濃いピンク、透き通るような美しい色白の肌に目を惹かれてしまうほどで、間違っても犬のそれではない。
「まあ、信じてもらうには時間がいるかな~。でも、12使徒を探してるんでしょ?石の共鳴に気づいて、それをもとに探すってのは、良い勘してると思うよ。でも、広範囲過ぎてその後どうやって探すか、行き詰ると思うよ。そこで!だ。僕の力が必要になってくる。」
若い男は得意げに話すが、周りを見回し、その反応の薄さに気付く。




