【破壊神ラーニーの野望~各星の現状~】
「まさか、自分が生きてきた世界がこんな仕組みになっていたなんて…。」
「元々、戦争のない平和な世界を作る為っていう、基本的考えは同じだったはずなのに…、おかしな方向に進んでしまったんだね。」莉亞は悲しそうな表情で話す。
「平和な世界…。ほんとにそんな事考えてる奴のする事かよ…。人の命や人生をもてあそんでるようにしか思えない…。」次々に言葉が飛び交う。そんな中、アラベルが、
「じゃあ、5つの惑星のうちの1つ、ナータンはもう助けられないってことなの?」と不安でいっぱいの表情で聞く。
「現状から考えると、救うのは難しい。人類の愚行…としか知らされていないので過去に何があったのか分からないんだが、地上は壊滅状態で、緑はなく、川や海などの水は一切存在しない。荒れ果てた大地には、ただむき出しの赤土だけが見える…そんな状態だ。まず人間が生存できる状況ではなかった。私が考えるに…おそらく全人類の愚行…とは大量の化学兵器の使用だろうと…。
私が初めて降り立った時、毒ガスのような気体で地上は覆われ、まず空気の浄化から始めなければならなかった。おそらく拉致された人間以外、あの星には存在していない。破壊神の手下どもが作った施設には、厳重な警備体制が敷かれていることから考えても…、拉致された人たちを救い出すのは至難の業だ。」父は苦渋に満ちた表情で続ける。
「メルゼブルクは、クラウディスの失踪と先の戦いの後、後継者である凱の訃報が国内に広まり、それを機に内乱を画策する不穏分子が動き出したとの情報が入っている。ファータは、絶大な力を誇るエルフィー皇子の拉致が国内に不安をもたらし、現国王の力だけではそれを収めきれない…となると、まずその2つの星は、真っ先に破壊神の手に落ちるだろうと考えて間違いない。その点でいえば、このアースフィアは奴らにとっては未開拓に近い。おそらく今頃、多くの手下が偵察に入っていると思われる。」そこまで話して一息ついて、全員の顔を見渡すと、最年少のリディアが上目遣いで自分を見ている事に気付く。
「どうした?リディア。」父が話しかけると、
「グラン?…ディアードさん、魔力を持った破壊神は、なぜ今さら魔導書を必要としているの?全ての魔法を習得しているなら必要ないはずなのに。」恥ずかしがり屋のリディアは、意を決して、顔を真っ赤にしながら声を振り絞り、響夜に質問する。
「質問してくれてありがとうリディア。グランディアードって言うのは難しいから、響夜、もしくは響夜さんでいいよ。」リディアの一生懸命に話すその様に、父は勇気を出し、自分の疑問を解消するために声を上げたリディアの頭を撫で、にっこり笑う。そして続ける。
「魔法の国メルゼブルクにおいては、常に新たな魔法が作り出されている。彼が亡くなった後から今に至るまでに作られた、多くの魔法を修得するため、全魔導書を手に入れようとしていたわけだ。それに彼らにとって、莉羽と凱の力は脅威で、その2人共に、剣術、魔法、異能術の全てが使いこなせる。それに対抗するため奴らも必死なんだと思う。」
「そういう事なのね…。でも…ここにいるみんなは今、凱とお父さんの話を聞いて大体の事は理解できるかと思うけど…、各星の兵士のみんなは把握できていないよね。必要情報だけまとめてみんなとイメージを共有するっていうのはどう?今後の戦略に必要だと思うし…。」
私が全員の顔を見渡すと、皆、そうだそうだと頷く。




