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【凱の両親~隠された事実~】

 すると、突前目の前が真っ白になり、ある光景が映し出される。


 それは、凱と私が中学1年生の時の事。凱の両親が海外赴任から帰国したときの出来事だった。


 1年ぶりの再会を前に、凱も両親も待ち合わせの場所に向かう足取りは軽く、お互いが約束の時間より1時間も早くたどり着く。凱を見つけた両親が、凱に駆け寄る。


『凱!』


母が凱を呼ぶ。その声に気付いた凱は、その場で振り向く。


 すると突然、凱の目の前に倒れこむ両親。何が起きたのかと辺りを見回すと…、そこには不敵な笑みを浮かべる男の姿があった。凱は、その男に飛び掛かろうとするが、男はそれより早く人ごみに紛れ、凱はその行方を見失う。すぐさま凱は両親のもとに戻り声をかける。しかし、母親は虫の息。かろうじて何とか話すことの出来た父の最後の言葉。


『こうなることは分かっていた。ただ時が早まったらしい。お前がその動きを止めてくれ。父さんと母さんが果たせなかった使命を…、お前が全うしてくれ。』


父の目に涙が浮かぶ。そして、最後の力を振り絞って凱に手を差し出し、


『愛している、この体が消えようとも。ずっと見守っている、お前が使命を果たすために…。』


そう言って息絶える。


 凱が、私が今まで見たことのないような殺意の目で、両親を殺害した男の逃げた方向を睨みつける場面で終わったその映像を目にした私は、


「何、この映像…。凱の両親は海外にいるはず…。殺されていたなんて知らない…。しかもなんであの男が…。何なの一体…。」


 私の頭は混乱していた。海外赴任の為、凱を私の両親に預けていると聞いていた凱の両親が亡くなっていたなんて…。しかもその殺害の犯人があの男である事を私は全く知らなかった…。


 すると、再び映像が始まる。その事件数日後のこと。両親を殺され、悲しみの渦中にいる凱に、そんな事情を全く知らない私が、落ち込む凱を励まそうと声をかける場面が映しだされる。


『凱…。いつも私の側にいてくれてありがとう。改めてこんな事言うの、ちょっと恥ずかしいけど…。でもちゃんと言葉にして伝えたい。


 私は凱が隣にいてくれるだけで、どんな事にも立ち向かっていける。そんな力をいつも貰ってる。でもね、じゃあ私は凱に何が出来るんだろうって考えた時に、私は何もできていない気がする。だから言うね。


 凱にとって私は…、何の役にも立たないかもしれないけど、凱を気にかけたり、心配したり…、凱を思う気持ちは誰にも負けないと思う…。ん?でも、凱のお父さんとお母さんには勝てないかな?いやいや、そんなことないかな?一番近くにいるし、やっぱり誰にも負けない!だから…っていうのもなんだけど…。凱には家族みたいな存在の私がついてるから、大丈夫!元気出して!』


 凱からは勿論、両親からも凱の両親が殺されたことを知らされていなかったとはいえ、こんな暢気な事を言っている自分が、今この映像を見て情けなく感じる。


【凱…、ほんとにごめん…。】心の中で呟くと、その映像の続きが流れる。


それは凱の心層だった。


『凱には私がついてるから、大丈夫!元気出して!』と言って凱の肩をポンポンと叩きながらほほ笑む私は、凱の心層ではこう映っていたようだ。



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