表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
268/493

【父と母~運命の出会い~】

 母は回生後、神遣士の資格を失い、再び生を受けたアースフィアで育ち、平凡な日々を送っていた。成人した母は、看護婦としてその地方の総合病院に勤めていた。


 父も同じくアースフィアで生まれ、その都市部に本社を構える、とある企業の開発部門の研究員となり、自分の研究室で日々研究に没頭し、滅多に社外に出る事はなかった。


しかし、その日は1年に1度あるかないかの出張の日だった。


 父が開発した新素材の量産工場を地方に建設することが決まり、その打ち合わせに参加するための出張で、打ち合わせ3日目、父は宿泊先のホテルに帰ろうと歩道を歩いていた。


夕暮れ時、皆が家路を急ぐ中、事故は起きた。


 父は歩道に突っ込もうとしている大型トラックに気づき、その先を歩く、数人の子供たちを救おうと走り出す。その中の数人は、父の「逃げろ!」と叫ぶ声でその場から離れたが、恐怖で動けなくなった男の子を守るため、父はトラックの前に飛び込み、子供を植込みの方へ押し出すと、自分はそのままトラックに跳ね飛ばされ数メートル先に倒れこんだ。


 それは、母莉月の目の前で起きた。


 普段、この街に来ることは滅多にない母だが、職場の上司の紹介でお見合いをするために、たまたまその日はこの地を訪れていた。上司は、仕事熱心で男性との出会いがない母を不憫に思ったのだろう。母は断りきれずに来たのはいいものの、まさか目の前に人が飛んでくるような事故に遭遇するなど思っていなかったし、まさか、その飛んできた人物と結婚することになるとは、もちろん思ってもいなかった。


 驚きのあまり、初めは声が出せなかった母だったが、事態を飲み込むと、すぐさま救急車を呼び、応急処置に入る。ほぼ即死のように見えた父であったが、母は諦めることなく救急車が来るまで処置を続けた。


 そして搬送されたのが、母の勤務する病院だった。父と母はこうやって運命的な出会いを果たしたのだ。

 母の献身的な看護により、父は急速に回復していく。そこで2人はお互いを意識し合い、お互いを思いあう日々を過ごしていた。しかし、怪我の回復で退院となれば、それは2人の別れを意味する。


 父と母にとっては、複雑な心境の中、退院を翌日に控えたその日、事が動く。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ