【父の呼ぶ声~命の灯火~】
誰もが予想すら出来なかった戦いの結末を、誰もが受け入れることが出来ないまま時は流れていく…。
しばらく目の前の状況をただ茫然と見つめている仲間たち。最強とまで言われた私の能力を持ってしても、いとも簡単に…、戦わずして命を奪われた私の亡骸を見た兵士たちの心の拠り所は、完全に喪失し、誰もがこの世の終わりを感じていた。
そんな中、私の仲間たちは、母の呼びかけにより莉亞の力によってアースフィアの自宅に戻る。メルゼブルクでの戦闘に加わり、私たちの死を前に絶望の渦中にいる各国の兵士たちも、母の指示通り流された、神遣士とバートラルの近日中の復活という根拠のない情報を信じることで何とか生きる希望を見出し、莉亞の力によってそれぞれの星に帰還する。
※※※
アースフィアの自室。破壊神、莉奈により命を奪われた私と凱がそれぞれベッドに横たわる。
「お母さん、莉羽も凱も、こんなところで死ぬわけないよね…?」
莉亞の涙が零れ落ちる。
「…。」
何も答えることのできない母。沈黙と深い悲しみが部屋中を覆い、2人が悲しみのどん底に突き落とされ、言葉も無くし、涙も尽きたころ、2人の心層に突如うめき声が聞こえる。
『うっ…。』
「えっ?今の…、何?」
その声と共に体中がぞわっとする感じに、莉亞が蒼ざめた表情で母に聞く。母は眉間にしわを寄せ、少し焦った表情で、
『響夜さん?』
母はその声の主に語りかける。
『り…莉月…。』かすれた声がかすかに聞こえる。
「お父さんの声?だよね?」莉亞は母の顔を見る。
「そうね、間違いない。響夜さんの声だわ。でも、なぜ私たちの心層に?ラーニーに洗脳された者は私たちの心層に入りこめないはずよ…。それに、響夜さんの命の危険を感じる…。」
母は焦りのあまり、いつになく早口で話す。
「そうだよね…、お父さんは洗脳されてるはずだし…、私たちを呼び寄せようとする罠かもしれない…。」
莉亞は、洗脳された父響夜との壮絶な戦いの直後だった為、どれだけ父がラーニーの洗脳により狂気の渦中にいるか、肌で感じ取っていた。そのため父の危機と言われても、にわかに信じられないでいる。しかし母は、その声の異変に気付いていた。
「お父さんの声が、洗脳以前の声に聞こえるの。それに、苦しそうな声…。嫌な予感しかしない。とりあえず様子を見てくるわね。2人の事は頼んだわ。」
そう話す母の身が心配ではあったが、長年連れ添った夫婦にしか分からないものがあると信じて、莉亞は頷く。
「うん。分かった。でも…、ほんとに気を付けて!もしここでお母さんにも何かあったら、私…。」涙目で母に伝える娘の表情に、莉月は莉亞を強く抱きしめ、
「大丈夫、私は帰ってくるから…。」そう言う母の目も、今にもこぼれ落ちそうな涙で光っている。
母は莉亞の力を借りて、父の声の方に飛ぶ。




