【メルゼブルク大戦㉙~女神降臨~】
頭を様々巡らせている私に莉亞が、
「莉羽!莉奈が来る。」
莉奈の急襲を知らせる声で私は我に返り、凱の手からその凱の『宿世石』を取り両手で握りしめる。
『凱。私は全てを諦めない。絶対に…。だから見守っていて。』
私は思いを込めて、凱の心層に語りかける。すると突然、凱の体からいくつもの光の筋が現れ、その光が天空を舞ったあと、私の体に入りこんでくる。そしてその光は、私の全身に行きわたり、体の細部まで再生させる。
新しい感覚を身にまとった私は、自分の力が新たに解放されていくのを感じ、さっきまで全く力が入らなかった拳に力がみなぎる感覚を楽しんでさえいた。私があふれ出る自分の力を徐々に制御できるようになると、それと連動するかのように、まばゆい陽の光が少しずつ辺りを照らし、曇天の空に覆われていたこの戦場に希望の光をもたらす。
その一部始終を近くで見守っていた莉亞は、私の目の色と髪の毛の色が、私のピアスと凱の宿世石と同じ「蒼」色になったことで、私の覚醒を確信する。
「莉羽…。あなたの可能性は無限なのね…。」
莉亞は、目の前で起こっている出来事に圧倒され、無意識に声を出していた。
私は光が射す方を見て目をとじ頷いてから、視線を凱の方に向け、
『凱、私行くね。少しの間待ってて。莉奈とは力の差がありすぎることは分かってる。でもね、やっぱり私には譲れないもの、諦めきれないものがあるから…。だから、そこで見守っていて。』
横たわる凱に微笑み、目前で迎え撃つ莉奈に足を向ける。
「莉奈、戦いはこれからよ。」私の一声は、その場にとどまっていたフィンをはじめとする仲間たちの士気を上げる。
「莉羽だ。莉羽が復活してる!俺たちも援護にまわるぞ。」
フィンが嬉しそうに、大声で皆の士気をさらに上げていく。
「おお~!莉羽。待っていたぞ。」
「莉羽!我らが女神!」口々に声を上げる仲間たち。
莉奈は私の仲間たちの様子を上空から一瞥して、
「早く撤退すればよかったものを…。上が上なら、その下に仕える者も、み~んな馬鹿になるみたいね。
馬鹿なあなたに仕えて早死にしちゃうんだから、ほんとにかわいそう。
まあでも、あなたを始末したら…、凱の肉体は私がいただくから安心して。そしてラーニー様の元、ちゃんと生き返らせてあげるから。
でも覚悟しておきなさい。次に凱に会えたとしても、次は間違いなく凱はあなたの敵だから。」
莉奈は不敵な笑みを浮かべて嬉しそうにそう言うと、凱の心臓を貫いた剣を振り上げる。




